SPECIAL TALK Vol.103

~個人の適性に見合った教育で日本の変革を目指したい~


多くの生徒が留年する中、ストレートで大学進学


サコ:日本に来て特殊だなと感じたのが、関西でいう「おない」という感覚ですね。マリだと「同級生=同い年」ではありませんから。

金丸:小学校から留年もありえますからね。

サコ:あと、小学校を卒業するときには、国家統一の試験があります。いくら学校の成績がよくても、その試験に落ちたら留年確定。中学校も同様です。高校3年生にもなると、5歳差の人と一緒に勉強するのが当たり前でした。

金丸:そんなに年齢差が。でも年齢の違う人がいる方が、多様性もあって、環境としても面白そうですね。

サコ:最近はマリでも塾が盛んですが、私の学生時代にはあまりなくて、高校時代は友だちと過去問を出し合って勉強していましたね。

金丸:競争が激しい中で、友だちと一緒に勉強しながら成長する。昔から仲間を作って突破するタイプだったんですね。

サコ:留学生を支援するグループを作ったり、私の家を拠点に毎週パーティーをしたり、お互いに支え合う拠点作りは日本に来てからも続けています。

金丸:サコさんは留年しなかったんですか?

サコ:しませんでしたよ。でも、そういうストレートで進学する人は、全体の20%もいないんじゃないですかね。

金丸:じゃあ、本当に優秀だったんですね。高校卒業後は中国に留学されたそうですが、それはどのような経緯で?

サコ:私が選んだわけじゃなくて、国から中国の大学に行きなさいと。そもそも私は、中国を知らなかったし。

金丸:えっ、行きたい大学を本人が選べないんですか?

サコ:全て国が決めます。マリでは成績がいい学生には国から奨学金が支給されて、海外の大学に留学させてもらえるんです。そして、これもマリの特殊なところなんですが、高校卒業の発表がラジオで放送されます。

金丸:えっ、ラジオで!?

サコ:当時はまだインフラが整っていなかったので、田舎に手紙を送ってもいつ届くか分からない。だけどラジオなら、みんな聴けます。どこの誰が高校を卒業できたか、誰がどこの大学に進学するかを全国民知ることができるんです。

金丸:合否結果を全国民に知られるなんて、複雑ですね。

サコ:そうなんですよ。「どこそこの国に行くことが決まったので、早く手続きしに来なさい」とかも。

金丸:なかなか想像がつかない世界です。

サコ:この放送は確実に伝わるという意味ではいい方法ですが、弊害は“伝わり過ぎる”ことで。私は都市部で生まれたけど、両親には田舎があって親戚もいる。私が進学することを放送で聞いた親戚が、「ウスビを見送りに来た」とどんどん家に集まってきて。

金丸:親戚関係も濃いんですね。

サコ:しかも、見送りといっても、出発の日に来るわけじゃありません。出発の1ヶ月前に来て、その後ずっと家にいる。

金丸:ちょっと待って(笑)。そのまま住み着くんですか?

サコ:20人とか30人が、ずっといるんです。もう邪魔ですよ、普通に(笑)。当然、宿泊費も食費も出しません。そのかわり、外国に旅立つ私にお金を渡してくれたり、「中国で役に立つでしょう」って品物を渡してきたり。

金丸:温かいじゃないですか。1ヶ月もいるのは迷惑だけど(笑)。

サコ:そうやって送り出してもらったのが40年近く前の話ですが、いまだにマリに帰ると、その親戚たちからお返しを求められるんです(笑)。だけど、いちいち誰にお土産を買っていけばいいかなんて覚えきれません。「何もないの?じゃあ、その時計ちょうだい」って言われたら、本当にあげなきゃいけない。だからマリに帰るときは、誰かにあげてもいい時計を着けるようにしています(笑)。

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