東京…特に港区は、ウソにあふれた街。
そんな港区を走る、すこし変わったタクシーがある。
ハンドルを握るのは、まさかの元・港区女子。美しい顔とスタイル。艶のある髪。なめらかな肌…。
乗客は皆、その美貌に驚き、運転席の彼女に声をかける。
けれど、彼女と話すには、ひとつルールがあった。
「せめて乗車中はウソ禁止です」
乗客たちは、隠れた本音に気づかされていく――。
「タクシー・ドライバー 〜柊舞香〜」一挙に全話おさらい!
第1話:港区女子を辞め、運転手に転職した美女。きっかけは?
ネームプレートの顔写真は、これが本当に無加工の証明写真かと疑うほどに美しい。「柊舞香」それがドライバーの名前らしい。
「…若い女性の運転手さんって珍しいですね」
「そうですか?最近増えていますよ」
「僕は初めてです。こんな美人な運転手さんは」
挨拶代わりの褒め言葉は、スルーされた。会話をそこでやめることもできたが、好奇心には勝てない。
「柊さんはどうして運転手になったんですか?」
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第2話:「もういい。1人で帰って」同棲中の彼女をタクシーに残して、去った彼。怒りの理由とは?
慎太郎は、タクシーで駆けつけてくれて、京子の会計を代わりに支払ってくれた。
六本木通りにあるヒルズの入口の交差点で、京子は慎太郎にしがみつく。頬を彼の胸に沈めたまま、うっとりとした表情を浮かべた。
「このフィット感、好き。超好き」
「さあ、タクシーが来たから、乗るよ」
やれやれ、といった口調で慎太郎は言った。まさかこの夜に、京子は慎太郎と喧嘩になるなんて、思ってもいなかった――。
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第3話:10回デートをしても、手を出してこない男。悶々とした女は、ある行動に出る…
天気予報にもない突然の雨は、いよいよ本降りになってきた。23時30分。傘を持たずにデートに出かけた戸川奈緒は、溜池山王の交差点で途方に暮れる。
― 空車のタクシーが全然ない。来ても乗車拒否される…。
なぜなら奈緒は今、ずぶ濡れなのだ。
ようやく1台のタクシーが目の前でスピードを落とし、停車。奈緒と同世代の女性ドライバーが、顔を出した。
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第4話:ウソの職業を伝えたまま、交際3ヶ月。女は、タクシーの中で突然真実を打ち明け…
「…優佳。さっきからどうしたの?」
心配になった辰哉が優しい声で問いかけると、ようやく優佳は口を開く。
「実はね。辰哉にずっと黙っていたことがある」
深刻な顔をしている優佳を見て、辰哉の顔色が変わった。
「…なに?」
「あのね。私、今の職場で働く前は『看護師として働いていた』って言ったと思うんだけど、あれ…実は…ウソなの…」
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第5話:「ダメとわかっていても体が勝手に…」男に深夜に呼び出され、喜んで会いに行く女の末路
「財布を忘れたのに、この5,000円は誰にもらったんだって思いますよね…?」
「ええ、まあ」
「彼氏に貰ったんです。五千円札を渡されて『これで帰って』と言われたんです」
失礼だと思いつつ、舞香は尋ねた。
「深夜の3時に…ですか?」
「そうです。そんなやつ、彼氏でも何でもないですよね…。付き合ってると思ってるのは、たぶん私だけです。向こうは私のことを彼女だと思ってない」
バックミラーに映る璃々の表情は、とても寂しげだった。
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第6話:飲み会で出会ったばかりの男と、タクシーで一緒に帰る女。女が男に仕掛けた、ある罠とは?
舞香が運転するタクシーは、西麻布で、ある若い男女を乗せた。
指定された行き先は、不動前。ハンドルを右にきって外苑西通りに入ると、女性がぼそりと話し始めた。舞香はその会話に、つい耳を傾ける――。
「私、ウソをつけないタイプなんで言いますね」
「どうしたの?急に」
「大貴さんって、私のこと狙ってるんですか?」
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第7話:「欠点のない男」と「完璧な女」。完全無欠のカップルが、交際1年で破局した理由とは?
「僕の彼女は、いつだって上機嫌なんです。…ほら、多くの女性って、突然不機嫌になったりするじゃないですか?」
広輝は「それって男性的には、理解はできるけど、共感は難しい案件で…」とあわてた様子で付け加えた。舞香が女性なので、フォローをしたのだろう。
「僕の彼女はそういう共感しずらい部分が一切なくて、つまり完璧なんです」
「いいですね。自分の機嫌を自分で取れる人、素敵です」
舞香は答えた。
「僕もそう思ってました。ただ…」
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第8話:彼と曖昧な関係のまま、1年が経過。悶々とする港区美女の耳に届いた、信じがたいウワサ
「広尾まで、お願いします」
彼の自宅マンションがある天現寺から、舞香の自宅アパートがある広尾まで、歩いたとしても5分だ。
このままでは、すぐに家に着いて、ひとりになってしまう。そう考えたとき、あるお願いが口をついて出た。
「あの…運転手さん、ひとつお願いがあります」
「はい」
「料金は払うので、広尾に直行しないで、グルグル回っていただけますか?その間、よければ私の話を聞いてほしいんです」
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第9話:年収2,000万のバリキャリか、年収300万の派遣か?一流企業の29歳男が選ぶ女は?
「私、別れたくないんですよ、彼と」
「二股されても、ですか?」
「はい。別れたくないので、彼を許します」
有紗はきっぱりと言い放つ。
「だから、どうしても相手の女に勝ちたいんです。どうやったら勝てるか、運転手さんも一緒に考えてくれませんか?」
タクシーの料金は、客を目的地まで運ぶことに対する報酬であって、そこに相談料は加味されていない。そんなことは重々承知の上で、有紗は頼んだ。
修羅場へ向かうタクシーの中、少しでも会話をすることで、緊張と不安を和らげたい気持ちもあった。
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第10話:「浮気しない男なんて、この世にいますか?」大勢の男女を見てきた元港区女子の見解とは…
「話し合いの結果がどうなったか、聞いてもらえますか?今度はウソはつかないので」
「ええ、もちろんです」
「最初に口を開いたのは、功太でした」
功太は、結論から告げてきたらしい。
「彼は、二股していた責任を取って、私とも相手の女とも『別れる』と言い出したんです」
「そうですか…」
「でも、私は『別れる』なんて、ウソだと思いました」
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第11話:「夫とは愛し合っているけれど…」港区在住の子持ち妻・34歳が、離婚を決意した理由
― あのときグッと堪えずに言い返していたら…私の人生は、どうなっていたんだろう?
初デートから3年後、大我と結婚し、真白が生まれた。そして、麻実が34歳、真白が3歳になった11月の今夜。
麻実は、体重14キロにもなった真白を片手に抱え、もう一方の手で、数日分の衣類を詰め込んだスーツケースを引き、乃木坂の自宅を後にする。
真白が深い眠りについている間に、千葉県流山市の実家に戻るのだ。離婚を決意していた。
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第12話:「今頃、彼女は他の男と…」同居中の女から“2時間だけ出ていって”と家を追い出され…
「乗車中はウソ禁止です。それでも良ければ話をしましょう」
「面白いなあ。わかりました。ではウソはつきません。僕の名前は辻原基樹と言います。27歳。小さいけれど人材派遣の会社を経営しています。パーソナルトレーナーを派遣したり、仲介する仕事です」
基樹自身も鍛えているのだろう。バックミラー越しに見える彼の身体は逞しい。
「今日は、時間つぶしのためタクシーに乗りました。理由は、今から2時間ほど自宅に戻ることができないからです」
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第13話:ずっと忘れられなかった彼と、4年ぶりの再会。運命だと思ったが、彼からまさかの報告が…
舞香は「乗車中はウソ禁止です」といつものルールを提示し、客たちと束の間の会話を楽しむ。
ウソ禁止。そのルールを客に求める以上、舞香もそれに従ってきた。
タクシードライバーとなって、まもなく4年になるが、舞香は車内でウソをついたことがない。
― でも今日、初めてウソをつくかもしれない。
今日ラストのつもりで拾った客を見て、舞香はそう思わずにはいられなかった。西麻布は、すでに夜が明けていた。
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第14話:「本当のことを教えて…」結婚式を控えた元カレと再会。女は“禁断の質問”をしてしまい…
「驚いたでしょ?私がタクシードライバーになってたなんて」
「うん、びっくりしてる…。えっ?どうしてタクシードライバーになったの?」
いきなり、核心をついた質問だ。
「4年前、涼太さんに『港区でまた会おう』って言われたから。タクシードライバーになったら、いつか本当に再会できるかと思ったの」
「そんなこと言ったっけ?」と返されるかと思ったが、涼太の口から出た言葉は違った。
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