2022.01.25
マウンティング・ポリス Vol.1Case0:結婚マウンティングをしてくる女
早朝に届いたLINE。それは、友人・澪からの「ランチに行かない?」という唐突なお誘いメッセージだった。
「Hey Mio.久しぶりだね」
急いで待ち合わせ場所へ向かうと、すでに澪と、彼女の友人である綾美が席に着いていた。
「ジェームズさん♡ご無沙汰しております!お元気でしたか?」
そう言って、いきなり僕に飛びついてきた綾美。…彼女に会うのは、今日が2回目のはずだ。その距離感に少し驚いてしまう。
「ジェームズ、元気だった?久しぶりね」
一方の澪は、いつものように物静かで品格漂う雰囲気だ。彼女とは子どもの頃からの顔なじみ。住んでいた家も近くて、家族ぐるみの付き合いになる。
今日のシックな装いもよく似合っていて、TASAKIバランスシリーズのパールネックレスとお揃いのイヤリングが、グレーのトップスに映えていた。
「で?今日はどうしたの?」
「綾美さんが、ジェームズに会いたいという話で…」
人のいい澪のことだ。どうせ無理矢理セッティングをお願いされ、断れなかったのだろう。
しかし、こういう誘いは度々ある。僕にはよくわからないが、仲のいい女友達いわく「ハイスペイケメンすぎて、逆に人畜無害」なんだそうだ。
幸いにも仕事は順調で、近頃は時間を持て余している。綾美には少し面食らったが、一旦、彼女の話に耳を傾けることにした。
「ジェームズさん、今お付き合いされている方はいらっしゃるんですか?」
綾美はそう言って、僕にシナを作る。
「いや、どうだろうね…」
この手の女性は、少し苦手だ。それに、明確に好意を向けてきてくれるのは嬉しいけれど、たしか彼女は既婚者だった気がする。
「綾美さん、結婚されていませんでしたか?」
「あ…。ちょっと聞いてくれます?最近、夫の愛情表現がより一層強くなっていて。疲れてるのに甘えてくるし、スキンシップも激しくて」
「それはいいですね」
適度な相槌を打ちながら、彼女の話を聞いた。
ちなみに僕には、結婚して今はロサンゼルスに住む、気の強い姉がいる。だから“女性の話は、適度に相槌を打ちながらひたすら笑顔で聞くこと”が大切だと知っているのだ。
それがきいたのか、綾美の話は少しも止まる様子がない。
「お互い30のときに結婚して、もう3年も経つのに…。本当、困っちゃいますよね。それに経営者でもないから、年収も3,000万くらいしかなくって。あ、うちの夫は外銀勤めなんですけどね」
― 年収3,000万、かあ。
手取り額がいくらになるのか、頭の中でぼんやり計算していた、そのとき。綾美は急にハッとしたような表情で、自分の顔を小さな手で覆った。
「って、澪さんごめんなさい!結婚していないのに、こんな話ばかりしたら退屈ですよね?私ったら本当に空気が読めなくて…」
しゅんとする綾美に驚いていると、澪が空気を読んだのか、小さな声で言葉を発した。
「全然退屈じゃないですよ。実は最近、いいなと思っている人ができたんです…」
「澪、好きな人ができたの?いいね!」
そう、2人で盛り上がっているときだった。
「ようやく澪さんも、結婚できそうな人と出会えたんですか?…あぁ、よかったあ」
唇をぷっくりとさせ、なぜかちょっと体をクネらせている綾美。澪へ向けられた言葉に、どこかトゲがあるような気がしたのは、僕だけなのだろうか…。
「そうね、綾美さん。おかげさまで私もようやく彼氏ができそう」
「本当によかったです〜!澪さんって、綺麗なのに男運がないというかなんというか…。いまだに独身だし、私の夫も心配してたんですよ」
ちなみに澪は、現在37歳だ。
「結婚って意外にいいものですよ!女性の幸せって、やっぱりいつかは妻になることだと思うんですよね~!」
そう言ってチラッと僕を見る綾美を見て、心がザワザワと音を立てる。
「それに澪さんって、大人しいというか少し地味というか…。本来だったら、20代のうちに結婚してるはずのキャラだと思うんですよね。澪さんはその方と結婚するんですか?」
「いや、それはどうかしら。まだ何も決めていないけど…」
その言葉に、声のトーンをあげながら綾美はこう言ったのだ。
「絶対、早く結婚したほうがいいですよ!ねぇ、ジェームズさん?」
…もうこれ以上、黙って聞いていられる状況ではなかった。
本当にその通りですね。
結婚した途端に、偉くなったような態度で独身を見下す人本当に多いから。
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