籠のなかの妻 Vol.14

一等地の高級マンションに引っ越した瞬間、女の生活は一変する。「籠のなかの妻」全話総集編

夫は、こんな人だった―?

周りに相談しても、誰も信じてくれない。子どもと一緒に夫の機嫌を伺う日々…。

最近、こんなモラハラ夫に悩む妻が増えている。

有能で高収入な男性ほど、他人を支配しようとする傾向が強い。

優衣(32)も、経営者の夫が突然マンションを買った日から、徐々に自由を失っていく。

広告代理店ウーマンから、高級マンションという“籠”で飼い殺される専業主婦へ。

彼女が夫から逃げ出せる日はくるのだろうか―?

「籠のなかの妻」一挙に全話おさらい!

第1話:年収900万の32歳妻が、退職に追い込まれた驚きの理由

― 保育園に空きがあれば、退職しなくても済んだのに…。

夫は経営者で、観葉植物を企業や家庭にリースする仕事をしている。オフィスは、購入したマンションから歩いて5分ほどの場所だ。

今住んでいる杉並から、会社へのアクセスが悪いとしきりに訴えられてはいた。だが、何の相談もなく引っ越しを決められてしまうとは想像もしていなかった。

これまでになく違和感がある夫の行動。優衣はこれから始まる新生活に、不安を抱えていた。

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第2話:「10万円!?」夫から提示された生活費に妻は絶句。足りないと嘆く彼女に、夫が差し出したものは…

「ごめんねー、そうだよね。リベイクするからちょっと待ってて」

優衣はにこやかにパンを皿に取り、キッチンへ向かうが、本心は穏やかではなかった。

― 久我山にいた時なら、パンを焼くくらい自分でやってくれたのに。

家族の時間が増えたことは、純粋に嬉しい。とはいえ、「この家を買った俺に感謝しろ」とばかりに、家事育児の一切に手を出さなくなった夫。優衣の心の中には小さな不満が湧き上がっていた。

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第3話:「さっさと始末しろ!」5年で会社を急成長させた若手社長の、妻に対するあまりに横暴な要求

「今日は仕事も落ち着いてるし、夕方まで家にいるわ」

片付けをしている優衣に、雄二がそう声をかけた。今は13時。夕方まで数時間ある。優衣はふと思いついた。

「じゃあ、私ちょっとお買い物に行ってきてもいい?夕方までには戻るから。その間、雄斗をお願いしてもいい?」

そう言った直後、優衣はこの日最大級の後悔をすることになる。

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第4話:「これでゆっくりできるだろ?」家事育児を一切しない夫からの計らいは、より妻を苦しめるものだった

専業主婦になり約2ヶ月経つが、優衣はやっと今の生活に慣れてきたところだった。

― あー、疲れた…。

交差点で信号待ちをしていると、最近、恵を経由して知り合ったママ友にばったり出くわし、話しかけられた。

「雄くんママじゃない?ちょうど連絡しようと思ってたの!来週うちでクリスマス会するから、雄くんと一緒に来ない?」

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第5話:夫は本当は家族思いの優しい人だから、私が我慢すればいい…。32歳専業妻の悲しい決意とは

「へぇー、やっぱ急成長する会社の経営者って目の付けどころが違うのね。今度お互いの旦那も交えて食事でもしましょうよ」

恵の提案に京子も乗り気なようだ。だが優衣だけは違う。

「タイミング合えばね…」と煮え切らない言葉を返すことしかできない。雄二の機嫌によっては、すんなり食事に行くとも思えないからだ。

優衣は、2人に先日の一件を相談してみようと思い立った。

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第6話:「なんなのこれ…」原宿に住む32歳専業主婦に、夫の裏の顔を確信させた恐ろしいモノの正体

日曜日の朝。普段より少し遅く目を覚ますと、寝室のドア越しに夫と雄斗の楽しそうな声が聞こえる。

優衣はベッドから起き上がり、リビングに行くと、すでに着替えを終えた雄斗がダイニングテーブルで朝食を食べていた。

― トーストにベーコンエッグ、バナナジュース…。これ作ったのって…。

優衣が呆然としていると、キッチンから雄二が出てきた。

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第7話:「いつでも連絡ください」横暴な夫の態度に悩む32歳の社長夫人に手を差し伸べた、意外な人物とは

人のいない裏原宿を雄斗の手を引きながら歩く。運動不足になりがちなコロナ禍。散歩も兼ねて歩いて買い物にいくことが増えた。

途中、銀行で用事を済ませようと、表参道の交差点に差し掛かったときのことだ。

優衣は見知らぬ男性から声をかけられた。

「あの…、失礼ですが…GREENERYの社長の奥様では?」

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第8話:「私を監視するため…?」モラハラを受け続け、疲弊する妻が見つけた夫の秘密

先日思いきって自分の母に相談してみた。だが、雄二の外面しか知らない母はこう言ったのだ。

「そんなのどこの家でも同じよ。きっとコロナで仕事も思うようにいかないし、家であたり散らすことぐらいあるわよ」

優衣の父は「男子厨房に入らず」を地で行っているような人で、家事や育児の一切合切を担っていた母。母の言葉に自分の我慢が足りないのだと思ったが、一方で実の親にも理解を得られなかったことに落胆した。

相談できる人がいない。それが今の優衣の状況だった。

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第9話:若くしてビジネスを成功させた30代の若手社長。社員が語る、彼の本当の姿は恐ろしいものだった…

優衣は1人でラ・ボエム表参道の店内の一角に座っていた。ここにやってくる前、恵に事情を話し、東山と会う少しの時間、雄斗を預かってもらうことにしたのだ。

事情といっても、本当のことを打ち明けたわけではない。

コロナ禍、夫の会社の様子がわからないから、社員にこっそり話を聞きたいのだと伝えると、恵は事情を深く探ってくるようなこともなく、快諾してくれたのだ。

予定より10分ほど遅れ、東山がやってきた。

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第10話:「この人と一緒にいるのが恐ろしい…」コロナでも看病するのが当然という夫を前に、妻はある決心をする

― はぁ…。なんで私、あんな男と結婚したんだろう?

気がつけば、雄二と結婚したことへの後悔ばかりだった。息子と手をつないだまま、無言でバッグの中から鍵を探す。

何気なくスマホを見ると、画面には着信の表示があった。東山とさっきまで一緒にいただけに、着信が彼ではないかとどうにも気になってしまう。

「雄斗、おうち入って手をよーく洗って」

息子を先に家にあげると、優衣は靴も脱がないままスマホの画面をタップした。

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第11話:「夫が改心しても、離婚するって決めたの」32歳妻が、原宿の億ションを捨ててでも夫と離れたかったワケ

優衣はキッチンでバナナ入りのオートミール粥を作りながら、頭の中であらゆる可能性を踏まえたシミュレーションを繰り広げていた。

コロナだったら。そうじゃなかったら。コロナが悪化したら。自分にうつったら。

今のところ夫は自室に籠っており、今朝は2日目の朝だ。食事はドアの前まで運び、接触を避けてはいるが、トイレは共用だし、お風呂だって熱が下がれば入りたがるだろう。

2020年5月。未知の感染病を診察してくれる病院は限られていて、それも一個人では受診すら思うように進まない現状。

― 放置してこの家を出たいけど…。

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第12話:「あなたの機嫌ばかりを伺って生活することに疲れたの。お願い、別れて」32歳専業妻の悲痛すぎる願い

夜、21時。いつもより少し遅く、雄二が帰宅した。深酒はしてなさそうだが、アルコールは飲んでいるようだ。

酔っていないなら、すでに雄斗は眠っているし、都合がいい。雄二は、部屋着に着替え、リビングのソファに横になった状態でスマートフォンを手繰っていた。

「あの、ちょっといい?話があるの」

優衣は意を決し、話を切り出すことにした。

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第13話:「あなたと一緒にいても癒されない」浮気を問い詰めた夫は悪びれた様子もなく言い放ち…

「浮気って私のせいなの?私が悪いの?癒されないって、あなたの方こそ、私のこと癒してくれてた?」

ところが、その反論、言い方のすべてが、火に油を注いだようなものだった。

「これだからなんでも人頼みの女は…。旦那の浮気は全て旦那のせいにする。熱帯魚を飼えば世話をしたくない、やれ、生活費が足りない、夫の病気は看病したくない…優衣って毎日文句ばっかりじゃん」

途端、感情的に優衣を非難し始めた雄二。優衣は何も言えずに黙っていた。

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