籠のなかの妻 Vol.4

「これでゆっくりできるだろ?」家事育児を一切しない夫からの計らいは、より妻を苦しめるものだった

夫は、こんな人だった―?

周りに相談しても、誰も信じてくれない。子どもと一緒に夫の機嫌を伺う日々…。

最近、こんなモラハラ夫に悩む妻が増えている。

有能で高収入な男性ほど、他人を支配しようとする傾向が強い。

優衣(32)も、経営者の夫が突然マンションを買った日から、徐々に自由を失っていく。

広告代理店ウーマンから、高級マンションという“籠”で飼い殺される専業主婦へ。

彼女が夫から逃げ出せる日はくるのだろうか―?

◆これまでのあらすじ

優衣が専業主婦になった途端、家事育児の一切をしなくなった雄二。夫の助けがないため、優衣は慣れない専業主婦の生活に疲弊していた。そんななか、夫が買ってきた熱帯魚を巡り、トラブルが起こるが…。

▶前回:「さっさとやれよ!!」5年で会社を急成長させた若手社長の、妻に対するあまりに横暴な要求


12月。

クリスマスの装飾に彩られた街中を横目に、優衣は自転車を漕いで家路についていた。

後ろには雄斗を乗せ、前カゴには千駄ヶ谷のスーパーで買い出した山のような食材。

多少遠くても、表参道の紀ノ国屋やナチュラルハウスなどのスーパーに行くより、安価な品物が豊富にそろうのだ。

それに、優衣の住む原宿から千駄ヶ谷までは平坦な道が続いていて、自転車でも行きやすいことから、週に何度か買い出しをするのが最近の習慣だ。

専業主婦になり約2ヶ月経つが、優衣はやっと今の生活に慣れてきたところだった。

― あー、疲れた…。

交差点で信号待ちをしていると、最近、恵を経由して知り合ったママ友にばったり出くわし、話しかけられた。

「雄くんママじゃない?ちょうど連絡しようと思ってたの!来週うちでクリスマス会するから、雄くんと一緒に来ない?」

こういった誘いが、最近の優衣の楽しみでもある。

「えー、いいの?行く行く!」

優衣は二つ返事で答えた。

「その日、日曜日なんだけどうちのダンナ仕事でいないから、ケータリングとるね」

ママ友のその言葉を聞き、優衣は楽しみな反面、家計が心配になる。

夫からもらっている生活費で、彼女たちと付き合っていくのはなかなか大変だ。ホームパーティーがあれば、いいワインやデザートを持参し、何かを頂いたらお返しをし、何かと出費はかさむものだ。

しかし、そんな日常や付き合いが、この街のママ友の中では普通。優衣は、ママ友に金銭の不安を悟られまいと、明るく振る舞った。

「嬉しい。楽しみすぎるー!」

信号が切り替わり、優衣は「また連絡するね」と挨拶をして、ペダルに足をかける。

この地に引っ越してきた当初、専業主婦の暮らしに息がつまりそうだった。夫の雄二は家事育児に非協力的だから、自分でなんとかする以外にはない。

認可保育園に空きがないなら、認可外でもいいから息子を預け、仕事を探そうとも考えた。

だが、毎日3食、しかも凝った料理を家で食べることに慣れてしまった夫に、今さら働きたいと言えばどうなるか、優衣は想像がつく。

引っ越してから雄二の人が変わったような場面に出くわし、優衣はどこか夫に対し萎縮していた。

ここのところ優衣は、自分が悪くないような場面でも、何となく自分が悪いように感じ、謝ってしまうのだ。

結局、雄斗が小学校に上がるまでの3年間は働くことを諦め、先月には、家から歩いていける私立幼稚園の入園申し込みをした。

幸い、優衣には代理店時代に貯めた1,000万ちょっとの貯金がある。

― また数年後に働き始めれば、専業主婦の間に使った分は穴埋めできるし…。

優衣は、そう自分に言い聞かせた。

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