籠のなかの妻 Vol.10

「この人と一緒にいるのが恐ろしい…」コロナでも看病するのが当然という夫を前に、妻はある決心をする

夫は、こんな人だった―?

周りに相談しても、誰も信じてくれない。子どもと一緒に夫の機嫌を伺う日々…。

最近、こんなモラハラ夫に悩む妻が増えている。

有能で高収入な男性ほど、他人を支配しようとする傾向が強い。

優衣(32)も、経営者の夫が突然マンションを買った日から、徐々に自由を失っていく。

広告代理店ウーマンから、高級マンションという“籠”で飼い殺される専業主婦へ。

彼女が夫から逃げ出せる日はくるのだろうか―?

◆これまでのあらすじ

東山から会社での夫の様子を聞いた優衣。そして彼は雄二のやってることは「モラハラ」だと断言した。優衣は自分の置かれた状況もようやく理解できた。離婚したい、でも…。

▶前回:若くしてビジネスを成功させた30代の若手社長。社員が語る、彼の本当の姿は恐ろしいものだった…


「あくまで僕が思ったことですが。離婚は一筋縄ではいかないんじゃないでしょうか」

東山の言葉に、優衣は思わず聞き返した。

「それはどういう理由で?」

彼は少しの間じっと考えたあと、慎重に言葉を選びつつ優衣の問いに答えた。

「当人同士の話し合いではうまくいかないような気がします。奥様は今まで社長ときちんと話し合いができたことはありますか?」

そう聞かれて、優衣はハッとした。

確かに東山の言うとおりなのだ。かつて子どもが生まれ名前をつける時、今住んでいるマンションを買う時、雄二の独断と事後報告がすべてだった。

「おっしゃるとおり、私の意見など聞き入れてもらったことはないですね」

ため息とともに、肩を落とす。

「弁護士に相談してみたほうが…」

東山がそこまで言いかけた時、テーブルの上に伏せられている彼のスマートフォンがブルブルと振動し始めた。

「失礼…」

優衣に断ると、席から立ち上がり外に出て行った。

― 弁護士か…。

すっかり冷めたコーヒーを一口飲み、気持ちを落ち着かせる。

優衣も、話し合いで簡単に決着しないことは分かっていた。だが、弁護士に依頼することまでは想定していなかったのだ。

「すみません、会社でちょっとトラブルが…」

東山が戻ってきて、申し訳なさそうに言う。

「お忙しいのにごめんなさい。私に気にせず戻って」

東山はテーブルの上の伝票を取ろうとするが、優衣は「ここは私が」とその手を制した。

「ありがとうございます。また近々」

そう言って、東山は慌てた様子で店から出て行った。

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