美は、お金をかければかけるほど育つ。
美容皮膚科に、ネイルサロン。それからサプリメント…。いくらあったって足りないの。
誰もがうっとりするような、手入れの行き届いた美貌。
ーそれさえあれば、魔法みたいに全てが上手くいくんだから。
そう信じて美に人生を捧げてきた27歳OL・ユリカの物語。
「美活時代」一挙に全話おさらい!
第1話:「お金をかけるほど安心できる」美容代は月25万円。“美しさ”に執着する女の生態
山岸ユリカ、27歳。丸の内の大手IT企業の企画開発部に勤めて、5年目。ユリカには、退勤前のルーティンがある。
毎日、17時10分に席を立ち化粧室へ。そして20分で化粧を直しデスクに戻る。すると、ちょうど定時の17時30分。フロアに流れるチャイムを聞きながら「お先に失礼します」とほほえむ。
「化粧直しは業務時間外にお願いしますね」と、新卒の頃はそんな風に咎める人がたくさんいた。でも、今となってはユリカの言動を注意する人はいない。何を言ってもムダだと誰もが思っている。一方のユリカは、今でも自分に何の問題があるのか分かっていない。
ーだって、美しさはビジネスにおいても武器になるじゃない。
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第2話:「お泊まりはダメ…」3か月も付き合っている男の誘いを、女が断ったワケ
初めて出会ったのは、5か月前。六本木ヒルズの1階にあるカフェで声をかけられたのがきっかけだった。
まだ凍えるように寒かった、冬の東京。席に着いたその瞬間から、ユリカは隣の男性からの視線をなんとなく感じていた。
でも、そんなことはユリカには日常茶飯事であり、特に気にも留めていなかった。かじかんだ手を温めるようにホットコーヒーを両手で包んで、一口飲む。
すると「熱っ!」と思わず声が出てしまった。それを聞いて、隣に座っていた祐太は、ユリカの顔を覗き込み言ったのだ。
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第3話:「一夜を共にしたときから違和感が…」絶世の美女が彼氏にフラれた、まさかの理由
祐太がいるはずのビルを見上げながら、3度目の電話をかける。わざわざ渋谷までタクシーを飛ばして祐太の会社まで来たものの、連絡がつかない。
ガラス張りのオフィス。そこに映る自分の姿を見て、ユリカは思わずため息をつく。
―今日も私は、誰よりも綺麗なのになあ。
とその時、見慣れた姿が視界を横切った。…祐太だ。財布を片手に持って、いかにも仕事ができそうな女の人と談笑しながら歩いていく。ユリカは、「待って!」と反射的に声をかけた。
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第4話:「たった2年の間にどうしちゃったの!?」27歳独身女が、出産した友人に浴びせたありえない一言
梅雨の合間のよく晴れた休日。日傘を畳んで、ユリカは待ち合わせ場所のレストランに入った。グルリとあたりを見回して、智美の姿を探す。
すでに店内にいるはずなのに、それらしき人物がパッと見当たらない。ユリカが困っていると、奥の方の席で智美が手を上げた。
「ユリカー!久しぶり!」
「…あ、智美!」
そこには、たった2年しか会っていなかったとは思えないほど“変化”した姿の智美がいた。
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第5話:「アテになりそうな男は、絶対手放さない」美容に月25万つぎ込む女の、最低な計画
「あーあ。智美の機嫌、損ねちゃったかな」
智美とランチをした日の夜。ベッドに寝転んだユリカは、3万円近いReFaの美顔ローラーでフェイスラインをマッサージしながら、考えこんでいた。
―智美が言うように、私ってかわいそうなのかな?
智美からの指摘について、あれから半日ずっと考えている。
けれど、やっぱり腑に落ちない。ユリカは、今の自分のことをかわいそうだなんて思ったことがなかったからだ。
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第6話:「職場に、自分よりも若くて美しい女が異動してきた…」嫉妬に狂う女が、取った行動
1週間後。ユリカの願いもむなしく、早速新しいメンバーの2人がフロアにやってきた。
キリっとした男性と、華やかな女性。聞けば、ユリカの2歳下で、他部署から異動してきたらしい。
―うわっ…。あの子、ちょっと綺麗かも。
白い歯を見せてニコニコしているその女性を見て、ユリカは憂鬱な気持ちになる。
香山 麗と、林 淳也。2人のフレッシュな挨拶に、フロアのあちこちから拍手があがった。
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第7話:「あなたが美しいせいで…」職場の後輩男子から受けた突然の告白に、女が狼狽えたワケ
ユリカが日課の長風呂をしていると、横に置いてあるスマートフォンが鳴った。さっき連絡した男たちの誰かかな?とウキウキ確認すると、画面には「林 淳也」と表示されている。
―え、淳也くん?もしかして私のこと、誘いたくなったのかな?
そう思いながら電話に出ると、予想に反して真剣な様子の声が耳に届いた。
「あ、ユリカさん。今日得意先に出してもらった見積もり、ミスだらけだったみたいなんですけど」
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第8話:職場で“女”を武器に仕事をしてきた27歳OL。入社5年目、女の身に起きたこととは…
ユリカはいつも、会議には呼ばれないのに、大事な会食の場には同席させられる。
―それって“女”として見てるからでしょう?
そしてユリカには、それが嫌ではないのだ。むしろ「ちょっと嬉しい」とすら思う。
だって自分のような美人が、その辺の女と同じ扱いをされるはずがない。そして丁寧に大事に、壊れ物のように扱われると、ユリカは「君は特別」と言われているような感じがしてホクホクするのだ。ふと、ユリカは顔を上げる。
―それにしてもあの子。言っちゃ悪いけど、ちょっと目障りだわ…。
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第9話:男に貢がれ続けてきたはずなのに、預金残高がほぼゼロに。そのとき女が取った行動は
ユリカは以前、親友の智美から言われたように、自分だけが大学生の頃から一歩も進んでいないことに、ようやく気付いた。
今後も際限なく美を極められるなら、それでいいとユリカは思っている。…だけど、それは無理なのだ。
引き出しから通帳を出して開くと、ユリカは預金残高をにらむ。何度見積もっても、そろそろクリニック通いを止めないと大変なことになる。
「悔しいけど、ここが引き際なのかな…」
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第10話:「私、社内の誰よりも綺麗だから…」美容中毒の女が上司に放った、とんでもない要求
「今日は、そこで働いてもらおうと思って」
「働いてもらう」という言葉にユリカは足が止まりかけたが、保奈美は構わず進んでいく。
「あ、安心してね?上には相談済み。ちゃんと休日手当も出すように頼んだから」
呆気にとられるユリカをよそに、保奈美は駅構内をズンズンと歩いていく。蒸し暑さのせいで崩れかけているメイクを気にしながら、ユリカもそのあとを追った。
「え、保奈美さん。これって…?」
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第11話:「月30万円も貢いでくれたのに…」元カレと復縁を望む女が見てしまった、ショックな光景
オフィスを出て東京駅に向かって歩いていると、誰かからの視線を感じた。広い歩道の隅で、黒いポロシャツを着た男が突然立ち止まり、ユリカをジロジロと見ている。
「…ん?」
ユリカも立ち止まって恐る恐る目を合わせる。
「…え、祐太?」
そこには、サプライズ旅行が決定打となって3か月ほど前に別れた、元カレの祐太が立っていた。
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