2020.08.25
ヤバイくらいに愛してる Vol.1―えっ。私、いまキスされてる…?
詩乃は驚きのあまり、目を丸くして亮を見つめる。
「ハハハ、詩乃ちゃん反応おもしろい。かわいいなあ」
亮の大胆な行動に、頬を染めて黙り込む。そんなウブな反応を見せる詩乃に対し、亮はもう一度唇を重ねた。
「もう、詩乃ちゃんって、なんでそんなにかわいいの?」
そう言う亮の目を覗き込んた瞬間、詩乃はハッと小さく息をのんだ。
…彼の目の奥は真っ暗で、ほんの少しも笑っていなかったからだ。
―なんだか、かわいそうな人だなあ。
詩乃は心の中で思う。こうして毎晩、初めて出会った女性を家に連れ込んで、本心では思ってもないような甘い言葉を囁いているのだろうか。
そんなことを考えた瞬間、亮は詩乃をギュッと抱きしめた。
「詩乃ちゃんのこと、俺だけのものにしたいなあ。他の男に渡したくない」
―なに、これ。私、告白されてる…?
そう考えると、急に心臓が激しく動き出す。抱きしめられている亮に、ドキドキという音が伝わっていたらどうしよう、そんなことを思った。
「…そういうこと、他の女の人にも言ってるんでしょう?」
「言わないよ、詩乃ちゃんだけ。で、どうなの?俺だけのものになってくれるの?」
半ばパニックで何も言えず無言になっている詩乃に痺れを切らしたのか、亮は言う。食事会のときのような、少しの強引さがあった。
「…なってくれないなら、いいや。もう帰って」
「えっ…」
慌てた詩乃が彼の顔を覗き込むと、なぜか亮は、傷つけられて今にも泣きだしそうな表情をしていた。
「俺はすっごく、詩乃ちゃんのこと、かわいいと思ってたのになあ」
さきほどまでとは打って変わって、しょんぼりとしている亮の姿に面食らってしまう。
「え、えっと、その…。亮さんのことは素敵だなって、思ってるんですけど…」
「けど…?」
亮は黒目がちの目で、詩乃のことをジッと見つめてくる。
「まだ亮さんのこと、全然知らないし。お付き合いするとかは、ちょっと…」
「じゃあさ、とりあえず連絡先交換しようよ。あと、電話番号も」
突然の提案に詩乃は断り切れず、おずおずとバッグからスマホを取り出す。そして連絡先を交換すると、亮はいきなりこんなことを言い出した。
「俺のこと、まだそんなに知らないから好きになれないんでしょ?じゃあ、毎日連絡取りあおうよ。それに俺も詩乃のこと知りたいから、おはようとかおやすみとか、いま何してるかとか、全部LINEで教えてくれない?」
詩乃は違和感を覚えながらも、自分を振り回してくる男から、なんだか逃れられなさそうな予感がしていた。
▶他にも:「彼女と交際してから毎晩ヘトヘト…」男が“付き合いきれない”と感じ、女から逃げた理由
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束縛の片鱗を見せ始める亮だが、本性がすこしずつ見え始めて…?
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