愛しすぎるが故に、相手の全てを独占したい。
最初はほんの少しのつもりだったのに、気付いた頃には過剰になっていく“束縛”。
―行動も、人間関係の自由もすべて奪い、心をも縛りつけてしまいたい。
そんな男に翻弄され、深い闇へと堕ちていった女は…?
「詩乃のこと知りたいから、おはようとかおやすみとか、いま何してるかとか、全部LINEで教えてくれない?」
その言葉が、すべての悪夢のはじまりであることなど、このときの詩乃は知る由もなかった。
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先日、26歳の誕生日を迎えたばかりの宮崎詩乃(しの)は、自由が丘のデザイン事務所でWEBデザイナーとして働いている。
いつか独立することを目標に、プライベートでもフリーランスとして仕事を受けたりと、仕事漬けの毎日。
そんな詩乃の生活を大きく変えたのが、友人に誘われて行った食事会だった。
「はじめまして、相良亮です。28で会社経営してます」
そう言ってニコリと女性陣に微笑む亮の姿に、詩乃はドキリとした。
―めちゃくちゃ、私のタイプだ。
優しげな奥二重の目元と、夏なのに一切日焼けをしていない色白な肌。スラッとした細身のスーツは、長身の亮によく似合っていた。
近頃、恋愛から遠ざかっていたせいか、久々に男性に対してドキドキしていることに動揺する。
その動揺を隠すように、詩乃は目の前のシャンパンをグイッと飲み干す。すると目の前の人物から、いきなり声をかけられたのだ。
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