2人の花嫁：「結婚式キャンセルする？」2020年秋婚のプレ花嫁たちのリアル

アヤ：結婚式の延期は本当につらかった…

「ただいま！」

紗理奈と別れ、六本木の自宅に戻ったアヤ。彼女の発した声は広々とした部屋に妙に虚しく響く。

土曜日だというのに、今日も夫の諒太郎は仕事で遅くなるらしい。

リビングの隅に追いやられたまま放置されている招待状と、段ボールに入ったままのプチギフトが目に入りアヤは1人深い溜息を付いた。

その奥にあるウォークインクローゼットには、ドレスに合わせて購入したアクセサリーや『ジミーチュウ』のブライダルシューズが入っている筈だ。

4月に延期を決めた時は、本当に苦しかった。

半年以上かけて準備して、ようやく形になりつつあった物が一気に崩れ去ってしまったから。

もちろん全ての工程が無駄になった訳ではない。けれど拘って選んだ季節の料理や、春婚に合わせて決めた装花はもう一度決め直しだし、日付が入ったペーパーアイテムやウェルカムグッズはもう使えない。

―なんか、新鮮な気持ちで楽しく準備してる紗理奈が、ちょっと羨ましい…。

招待状はwebで再送するとして、「人数をどれくらい減らすか」についても決まっていない。夫と話し合おうにも時間が合わず、今に至る。

―殆ど1人で頑張ったから余計に絶望感があるのかも。

外コン勤務の夫は、アヤに輪をかけた激務ぶりだ。そのため結婚式準備のウェイトは、必然的に全てアヤに傾いてしまう。

―ドレス、私だって2人で選びたかったし。

紗理奈の「ドレスショップに夫と行った」というインスタ投稿を見て、そんな気持ちが頭を掠める。彼女のインスタからは、夫婦で和気藹々と結婚式準備を楽しむ様子が垣間見れる。

ブブブ…。

テーブルの上に置いていたiPhoneがLINEの通知を知らせて振動した。

紗理奈：今日はありがとう。また近々情報交換も兼ねてランチしようね♡

いかにも丸の内OLといった雰囲気の紗理奈みたいなタイプと、今まで仲良くなったことはなかった。正直に言うと友だちになれるのかという懸念はあったが、この時期に同じ花嫁仲間がいるというのは、やはり心強いものだった。

アヤ：こちらこそ、また是非行こう。最近気になってるお店があるんだよね。

紗理奈と行きたいお店のリストを思い浮かべながら、返信をしたのだった。


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2020年秋婚のプレ花嫁として友情を育み始めた2人だが。実は、紗理奈とアヤがそれぞれ抱える問題があった…

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