11月に都内の外資系ホテルで結婚式をあげる予定の紗理奈。
1年前に予約したときは、まさかこんな状況になってるなんて思ってもみなかった。今までとは違う生活様式に切り替わっていく中で行う結婚式準備は、不安だらけだった。
そんな時、会社の先輩に『2020年婚』の花嫁仲間が欲しいとボヤいたところ、「丁度、同じ式場、同じ時期に挙式する子がいるわよ」とアヤを紹介されたのだ。
「アヤちゃんは、結婚式延期したって聞いたけど」
「そう。本当は5月に結婚式を予定してたんだけど、延期して11月にしたの」
そう言って髪をかき上げた彼女の腕には、エルメスのバングルがセンス良く巻かれている。そして左手薬指には存在感のある一粒ダイヤの婚約指輪。
―あの指輪は、ハリーかな。
そこからは式の話で盛り上がった。
「11月だから少し先とはいえ、やっぱりこのまま挙げて良いのか不安だったの。周りでも式は来年に延期したって子が多いし、いろいろ話せる人が居たらなぁって思ってたから、アヤちゃんみたいな素敵な子に出会えて嬉しい♡」
紗理奈は去年の11月にプロポーズされ、ベタだけど「いい夫婦の日」に結婚式をあげる予定だ。
あまり先延ばしにしたくなくて決行する予定だが、ホテル側も色々対策しているとはいえ、今からでもキャンセルした方が良いのでは?と悩む気持ちはずっと付き纏っている。
そんな悩みを合わせてこぼすと、「それは私も同じよ」とアヤが苦笑いする。
「4月に延期決めた時は、11月なら大丈夫だろうって思ってたけど、まだ落ち着かないし。でも2回延期すると、流石に延期費用が痛いのよね…」
今年の11月に式を挙げる者同士、悩んでいることは同じだった。
既に100万弱の延期費用が掛かっているアヤの話を聞いて、改めてこの時期に結婚するカップルの世知辛さを思い知る。
「ご主人は何をしている人なの?」
自然な流れで早速お互いの懐事情を探り合う会話が繰り広げられる。
アヤの夫は、彼女より7歳年上の35歳で外資系コンサルティング会社勤務だという。
「パワーカップルって感じで、すごく素敵。うちの夫は損保務めで私と同じ27歳。社会人テニスサークルで知り合ったの」
「ちなみに、アヤちゃんはドレス何処のブランドにする予定?」
先日提携ショップでドレスの試着を終えたばかりなので気になってそんな質問をしてみた。
「色々迷ったけど、私は『Vera Wang』のオーダードレスにしたよ」
―うわぁ、さすがリッチ。
ドレスの最高峰ブランド名があっさり出てきた事に内心舌を巻いた。Vera Wangのドレスは、レンタルは一部のみで多くのデザインは購入しないと着られない。購入すると1着80万以上はするだろう。
ーこの子ともっと仲良くなって色んな話を聞いてみたいな。
純粋にそう思っていたから、LINEとインスタのIDを交換した時はとても嬉しかった。
「ええっ、アヤちゃんのインスタ、フォロワーが3万人もいるんだけど!凄くない?」
紗理奈もフォロワーは割と多い方だが、桁が違う。アヤは「そんな大したもんじゃないよ」と言って美しく微笑んだ。読者モデルをしていたこともあるというから、合点する。
―アヤちゃんって、青学時代の同級生達に、何となく雰囲気が似てるかも…。
キラキラしたインスタを見て、ふと東京の大学に入ってから出会った友人達との苦い記憶を思い出し、芽生えた黒い感情を慌てて打ち消したのだった。
この記事へのコメント
11月の結婚式に参加する予定ですが、子育て中の身としては実際悩む気持ちもあります
ただ心から祝福しているので、本当に頑張ってください
歳も歳なので子供も早く欲しいと思うし妊娠と式と重なるとか考えると予定も立てられず。
お悩み中のカップル、ご夫婦も多いですよね。