2020.07.14
夫婦リボーン Vol.2夫の逆襲
−何この優雅な雰囲気。
千夏は、画面に映し出された森田に釘付けになった。正確に言えば、森田ではなく、彼の自宅の様子に、だ。
見るからに広々としたリビング。画面の端っこに映っているソファでは、ゴールデンレトリバーがスヤスヤと眠っているではないか。
壁にはモダンな絵画が飾られており、まるでモデルルームのようだ。そんなおしゃれ空間の中に、気難しい顔をした森田が座っている。
はじめこそ、よく出来た壁紙かと思ったが、時々、物音に反応したゴールデンレトリバーの耳がピクピク動くから、おそらく本物だろう。
一方の千夏は、薄暗くて狭いベッドルームだ。
−私も、あんな環境でリモートワークしたい…。
千夏の目には、森田の自宅がキラキラと輝いて見えた。
これまで、森田の自宅がある千葉のベッドタウンなんて興味もなかったし、羨ましい気持ちなど、全くなかった。
銀座で暮らす自分の方が格上。そう思っていた。だが、今となっては、ただただ、森田の生活が羨ましい。
「…了解。それじゃ」
資料の確認を終えた森田は、さっさと画面から消えたが、千夏の脳裏には彼の自宅が脳内でずーっと再生されたままだった。
お風呂上がり。
ストレッチしながらテレビをつけると、緑豊かな田園風景とともに、“田舎に移住”という声が聞こえてきた。
レポーターが、“最高です!”と、笑いながら露天温泉に浸っている。
「田舎もいいなあ…」
ポロリと本音が出てしまう。すると雅人が驚いた様子で、「千夏って、田舎暮らし嫌だって言ってなかった?」と、声をかけてきた。
「そうだけど…。この部屋、狭いんだもん。在宅勤務になって、正直しんどいなって思った」
ここ数日の不満をつい口にすると、雅人が「千夏が選んだんだよ」と、言う様子が小憎らしい。
「どんなに狭くても銀座が良い。絶対に銀座に住みたいって言ったの、千夏だよね?」
「…」
痛い所を突かれた千夏は、黙ることしか出来ない。
部屋探しをしている時、一等地でなくても多少広い部屋を考えていた雅人をねじ伏せて、銀座が良いと押し切ったのは自分だ。
あの時から彼は、「いくら新築で共用部が充実してるからって、家賃管理費合わせて28万、50平米もないのか…」と、ブツブツ文句を言っていたのだから。
雅人はさらに、今の千夏の胸の内を見透かすかのようにこう続けた。
「買い物も外食も出来なくなったら、銀座に住む意味ないもんな。今になって後悔してるんだろ?」
彼の馬鹿にするような物言いに、一気に頭に血が上る。
「別に後悔なんかしてないけど」
強がって反論してみるが、雅人は「本心じゃないだろ」と、笑っている。
−ああ、頭にくる。何なのよ!?
これ以上彼と話すと喧嘩になりそうだ。一刻も早くその場を立ち去ろうと、千夏はベッドルームに駆け込んだ。
イライラした気分を解消するには誰かに共有するしかない。友人にLINEしようと、アプリを起動させると、一通のメッセージが表示された。
“私、もう旦那とやっていけそうにない…。無理”
送り主は、大学時代の友人・葉月。彼女は、10歳年上の弁護士の夫と結婚し、恵比寿の広いマンションで悠々自適な生活を送っている。
高級品ばかりのプレゼントに、気分転換に5つ星ホテルステイ。そんな贅沢な毎日を送っている葉月が一体どうしたのだろう。
千夏は急いで葉月に電話した。
▶前回:銀座在住、世帯年収2,200万。最強DINKSを襲った、在宅勤務の悲劇
▶︎Next:7月21日 火曜更新予定
裕福な妻・葉月を襲った悲劇とは一体…?
50平米以下の方がちょっと気の毒だよ‥‥千葉だって良いところですよ!
この金額月々払ったら千葉では豪邸作れちゃうよ。なかなか真似できる金額じゃないよね。
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