Who? Vol.2

芸能界に君臨する「女帝」からの、最初の誘惑。彼女から寵愛を受けていた男の、秘密にしたい過去

—この男は、誰だ?—

明晰な頭脳と甘いマスク、輝かしい経歴を武器に、一躍スターダムにのし上がった男がいる。

誰もが彼を羨み、尊敬の念さえ抱いていた。

だがもしも、彼の全てが「嘘」だったとしたら?

過去を捨て、名前を変え、経歴を変え、顔を変えて別人になり、イケメンジャーナリストとしての地位を手に入れたレオナルド・ジェファーソン・毛利。通称『レオ』。

唯一の秘密の共有者が死んだ時…脅迫とも取れる不審なメッセージがレオの元に届く。真実が発覚することに怯え、調査を始めたレオだったが…。


『人は歩まんと欲する道に案内される:ユダヤの教典・タルムード』


「結果から申し上げますと、レオさんの携帯にいたずら電話やメールを送った携帯の、持ち主を突き止めることはできませんでした」

僕のマンションに到着するやいなや、挨拶もそこそこに『結果報告』を始めたのは、マネージャーの相原妙子(あいはら・たえこ)。

「使われた携帯はレンタルされたものでしたが…」

彼女が続きを喋ろうとした時。火にかけていたコーヒードリップ用のケトルが沸騰し、カタカタと音を立て始めたので、僕はキッチンに向かいながら言った。

「まあとりあえず座ってよ。続きはコーヒーを淹れてからにしよう?」

リビングの入り口に立ち尽くしたままだった彼女にソファーを指差し促すと、では失礼します、と堅い返事で姿勢良く座った。

背もたれなど使わないピンと伸びた背筋、ひとつにきっちり束ねられた黒髪、細い銀縁のメガネ、灰色の地味なスーツ。どれもが彼女の堅実さを表す、いつものスタイルだ。

名は体を表すというが、28歳とまだ若手の部類に入るのに浮ついた所はなく、仕事は早くて確実、その上勘も良く口も固かった。

ノリと調子が良いことが重宝されるこの業界では異色とも言える存在だが、だからこそ、僕が唯一信用できる事務所スタッフでもある。

『携帯に届くメッセージの発信者を調べて欲しい

僕がそう頼んでから今日でちょうど一週間。あれからあの不快なメッセージはピタリと止んでいるが、僕は、あれが間違いやただのいたずらだったとは思えずにいる。

コーヒーの入ったマグカップを2つ、ソファーの前のテーブルに置くと、それが合図とばかりに相原が報告を再開した。

「使われた携帯はレンタルされたもので、貸し出した会社はわかったのですが、既に返却されていて今は誰も使っていない番号だということでした。

誰が借りていたか調査するためには、警察に被害届を出すことが必要のようですが、出されますか」

「…いや…」

警察はまずい。被害届を出すということは、事情聴取を受けるということで、心当たりなどを追及されてしまう。そうなれば…。

「警察に行けば、マスコミに嗅ぎ付けられるかもしれないだろ。大げさな騒ぎにはしたくないから、警察はやめたいな」

僕がそう言うと相原は、承知しました、と短く答えて続けた。

「ここまでは、正攻法の調査のご報告です。この後の調査方法のご相談、と言いますか、レオさんの意思確認をしたくて、久しぶりのお休みにも関わらずご自宅まで押しかけさせて頂いたのです」

確かに相原は、内密にお話ししたいことがあるのでご自宅にお伺いしても良いか、と連絡をしてきたが。

―ここまでは正攻法、ということは.....

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