2020.07.07
夫婦リボーン Vol.1東京を謳歌するダブルインカム夫婦
南方千夏(みなかた ちか)、31歳。
メガバンクの総合職で、現在は、大手町にある本社の企画部に所属している。
夫・雅人とは、大学時代に入っていたテニスサークルの先輩と後輩の間柄で、OB会で再会したのをきっかけに交際を始め、2年前に結婚した。
実は千夏は、学生時代から雅人に想いを寄せており、晴れて片思いが実った形。
雅人は、俳優顔負けのルックス、頭脳明晰で運動神経抜群。
容姿、能力ともに、”可もなく不可もなく”という表現がぴったりの千夏にとっては、雅人は憧れの人だった。そんな彼から、「学生時代から思っていたけど、千夏って本当に気が利くし、献身的にサポートしてくれるよな」と、告白された時には、天にも昇る心地を味わった。
同時に、雅人のことは誰にも渡さないと、心に誓った。付き合い始めてからは、激務な雅人ために家事をサポートし、デートも彼の予定を第一に優先してきた。
結婚後も、外資コンサルで働いている雅人は超多忙な毎日を送っており、夫婦でゆっくり話せるのは、休日くらいだ。
もっとも千夏も千夏で、平日夜は、だいたい、週に2回は残業、そのほかはジムや勉強、友人と食事に出かけたりと忙しい。
住まいは、銀座。オフィスビルの間にひっそりと立つマンションで、部屋は1LDKだ。
少し狭いが、平日ほとんど家にいない2人にとっては大きな問題ではない。
休日、デパートで買い物、おしゃれなレストランで食事やお茶をする、そんな贅沢なライフスタイルを満喫出来る方が大事なのだ。
世帯年収は2,200万。
「南方さんの生活、羨ましい」
周囲の人にもよく言われるのだが、自分でもそう思う。この東京を謳歌する、自他共に認める恵まれた夫婦なのだろう。
仕事を終えた千夏は、急いで銀座のデパートへと向かい、デパ地下で夕食を調達する。帰り際、焼きたてパンの香りに釣られ、買うつもりのなかった高級食パンやスコーンなども買ってしまった。
−さてと。
一度家に帰って荷物を置いた後、今度はスーパーへと向かう。明日からの在宅勤務に備えて、食材を調達しなければならないのだ。
多忙な雅人は、平日家で食事を取ることはほとんどない。
一方の千夏も、友人と外で食事したり、適当に買って来て済ませることが多いため、南方家の冷蔵庫は、空っぽなのだ。
色々買い込まなければ。あれこれ考えながらスーパーに入った千夏の目に飛び込んで来たのは驚愕の光景だった。
「うそでしょ…」
商品が全然ない。パンやカップラーメン、水などは全て売り切れている。
千夏は目についたもの全てをとりあえず買い物かごに突っ込んで行く。
結局買えたのは、日持ちのしない生麺や野菜、少し高めのウィンナーやハムだったが、何も買えないよりはだいぶマシだ。
さっきデパートでパンを買っておいて正解だったと、ホッとした。
−重すぎる…。
無事に会計を済ませた千夏は、歩き出したのだが、すぐに立ち止まった。
ぎゅうぎゅうに詰めたビニール袋を3つ。腕がちぎれそうなほど痛い。
あまりの重さに耐えきれず、タクシーを拾おうと、手をあげる。だが、15分待っても“空車”表示のタクシーは現れなかった。
−はあ、最悪…。
ついに諦めた千夏は、ノロノロと歩き始めた。
自宅までは、400m。普段なら10分もかからない距離なのに、今日ばかりは、遥かかなた、遠くのように思えた。
何かおかしい。
この時千夏は、世界の異変を肌で感じ取った。
リモートだと運動量少ないしそんなに食べることに必死にならなくても良いかと。
一番辛いのは仕事のテンポが掴みづらいとこだと思う。
会議は重なるとどっちかがベッドでやるしかないし、電話かかってくるのに気を使うし、食事のタイミングで仕事がのってても中断しないとだし、一息もつきづらい。
でも、うちは料理をしてくれるダンナだから、私だけ!にはならなず仲良く過ごせてる。
男性が料理するって、本当に大事だよ。
その中での2人とも在宅勤務はかなりストレスね。
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