2020.06.13
14日間の恋人 Vol.15ひとり旅をするとき、こんな妄想をしたことはないだろうか。
ー列車で、飛行機で、もし隣の席にイケメンor美女が座ったら…?
そして、妄想は稀に現実になる。
いくつになっても忘れないでほしい。運命の相手とは、思わぬところで出会ってしまうものなのだと。
傷心旅行に発った及川静香は、素性の知らない男と恋に落ちる。
しかし彼は、大きな秘密を抱えていて…。
出会いから、別れまで、たった14日間の恋の物語。
「14日間の恋人」一挙に全話おさらい!
第1話:「名前も知らない男と…?」普段はマジメすぎる女が、旅先で初めての経験をした日
月に一度は海外出張をする静香でも、このような“仕上がったムード”の機内はなかなか体感できない。ハワイ便特有のものなのだろう。
笑みを浮かべた人々を見渡していると、世界中で不幸なのは自分だけだという錯覚に陥る。静香は、誰も座っていない廊下側の隣席を見た。
―本当なら、ここには健次がいたのに…。
誰にも悟られないよう、この場にそぐわぬ溜息をついた。
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第2話:「彼を忘れたいなら、俺を利用すれば…?」出会って2日目で、素性もわからぬ男に心を許した女
目が覚めたとき、静香は「ここはどこだろう?」と困惑した。東京では感じることの少ない、まぶしい陽光。目をうっすらと開けて、天井から窓、その先の青空へと視線を移していく。
―ああ、私、ハワイに来てるんだ。
次の瞬間、アルコールのせいで曖昧だった記憶が蘇ってくる。
―旅の初日。私、出会ったばかりの男と…。
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第3話:「運命なら、またどこかで会えるはず」。一夜限りの名もなき男が、女に対して取った行動
静香は立ち上がり、ソファで脱いだリゾートワンピを丁寧にしまった後、玄関脇に放置してあったクラッチバッグを拾い上げた。
内ポケットには小さくたたんだメモが入っている。静香の名前とケータイ番号を記したものだ。
―結局、渡せなかった。…でも、これでいい。だってこれが旅の醍醐味でしょ。それに私はフリーだし、これでいいのよ…。
何度も自分に言い聞かせるが、言い聞かせるたび虚しさは増していく。
もう一度、寝てしまおうか。朝陽の中で二度寝も悪くない、などと考えていると、部屋のドアがチャイムも鳴らずに突然開いた。
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第4話:「女とすぐに深い関係になるような男は、所詮こんな人か…」彼女が失望した、男の一面とは
2日目の夜、勇作は「元カレを忘れたいなら、俺を利用すればいい」と囁き、静香はその言葉に甘えた。結果、その思惑どおりになったではないか。勇作に感謝しよう。
地ビールのグラス5杯をすべて飲み終えた静香は、店員に会計を頼む。レセプションカウンターの前を通って、階段をおりて店外に出ようとしたその時だった。
カウンターの脇に、地元ミュージシャンのライブ告知のフライヤーなどに交じって、一枚のフライヤーが目に入った。なぜならそこには、見覚えのある顔写真が載っていたからだ。
すぐに手に取り、顔写真をまじまじと見つめる。いつものクシャッとした顔で、勇作が笑っていた。
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第5話:エスカレートする男の要求に、耐えられなくなって…。女が明かす、愛した男との過去
「“西の果て”までロングドライブになるけど、何か俺に聞きたいことある?」
不意に勇作が言った。んー、と首をかしげながら静香は考えるフリをする。
聞きたいことなら山ほどある。昨日、かなり親し気に電話で話していたアンジェラやクリスティーナといった女性たちとのことを筆頭に…。
何から聞こうか迷っていると、勇作が先に発言した。
「特にないなら、俺が静香に聞いていい?」
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第6話:「俺は君に、運命を感じてる」。2人きりになった途端、男が女に告げた本音
ガイドを依頼して、すでに3日目。1日目は王道のオアフ東端を、そして2日目は勇作おすすめのオアフ西端を、ともにドライブした。
「リクエストがなければ、オアフの北、ノースショアとかハレイワに行こうかなって思っているけど」
「リクエストなら、ある。あなたのことをもっと知れるような場所を案内してほしいの」
静香は覚悟を決めて口を開く。それを言うには、少しだけ勇気が必要だった。
「俺のことを、もっと知れる場所…?」
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第7話:「そこで、何してるの?」女が驚いた、5年も交際した男がやっていたコト
東京に帰れば仕事が待っている。日常が戻ってくれば、勇作のことはすぐに忘れる。まとまらない考えを、無理やりまとめあげた静香は、公園を歩くスピードをあげる。もうすぐ勇作が車で迎えに来てくれる時間だ。
…と、その時だった。静香は青ざめた顔で立ち止まった。
「嘘でしょ…」
静香の目に飛び込んできたのは、ここにいるはずのない人物の姿だったのだ。
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第8話:「今は、彼に身を委ねたい…」傷ついた女が“もう一度恋をしたい”と思えた瞬間とは
―健次とその女性がハワイにいるなら、泊まっているホテルはきっとワイキキの近くだ。
つまり今、自分がいるこの場所の近くに二人がいるということだ。急に静香は怖くなって、急にこの場を離れたくなった。逃げたくなった。なんなら日本に帰りたいとさえ思った。
そんなところへ、救いの電話が来たのだ。勇作からだった。
「話がしたいんだけど、14時にタンタラスの丘に来れる?」
静香はすぐに立ち上がった。本当は、会うのは昨日が最後のはずだった。
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第9話:「このメッセージ、何かがおかしい…」メールを受け取った女が、男の嘘を一瞬で見破ったワケ
当時、付き合ってすぐに紹介され、事あるごとに一緒に飲んでいた健次の親友たち。彼らは、彼が二股していたことを知っていたのだろうか。知っていながら、最後の2年は何食わぬ顔で静香と会っていたのだろうか。
親友たちは健次の二股を咎めただろうか。いや、咎めてはないだろう。でなければハワイの挙式までついてこないし、楽しそうなバチェラーパーティを開催したりはしない。
―全員クズだ。
許せない。静香はどうしても許せなかった。そして、すべての原因を作った健次に対し、どうしようもなく腹が立つ。
「私、ちょっと行ってくる」
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第10話:「どうしてそんなことするの…?」女が思わず心を許した、男の愚直すぎる行動とは
ー思い返せば…。
静香は記憶を手繰り寄せようとして、やめた。最初は健次に怒っていたのに、気づけば勇作のことばかりで頭がいっぱいになっている。
今はすべて忘れたい。カラカウア通りを散歩して、適当なレストランでランチにしよう。そう思って立ち上がったとき、スマホが鳴った。
スマホを手に取る前から予想はしていたけれど、表示画面を見て、やっぱり、と思った。その電話は、勇作からだった。
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第11話:出会って2週間たらずで、女が男の連絡先を消去した理由とは?
「待って」
反射的に、静香は手を振り払う。
「さわらないで!もうアンタなんかと話すことはない!」
「それでも大事なことなんだ!」
健次は、静香以上に大きな声を出した。そしてそのあとに続けたのは、意外な言葉だった。
「勇作って男のことで、話があるんだ」
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第12話:「彼がこんな男だったなんて」。結婚した3日後に、妻が明かした夫に対する本音とは
静香は、川にボトンと落ちることを覚悟で、懸命に手を振って「ハロー!」と呼びかけた。スージーは、持っていたパドルを隣でSUPしている男の子に渡し、両手を使って大きく手を振ってくれた。
『あの彼は、スージーのボーイフレンドなの』
まだ10才にもなっていない少女に、まだ10才にもなっていないボーイフレンドがいる。一方、自分は、ひとりでハレイワまでレンタカーで来て、ひとりでSUPを習って…。
どれだけ良い景色で、心地よいアクティビティをしていても、思い出すのはいつも隣にいた勇作のことだった。
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第13話:差し出されたモノに目が眩んで…。「女を本気にさせたい」と男が思った、本当の理由とは
「私と出会ったのも、偶然じゃないんだよね?」
返事をする代わりに、勇作は大きく頷いた。
「どういうことか、説明してくれない?」
静香の懇願に対し、勇作は大きく息を吐いてから、覚悟を決めたようにこう言った。
「わかった。全部、話す」
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第14話:「あんなにヒドいこと、されたのに」14日間彼女を騙していた男に、女が突きつけた条件とは?
明日から2週間ぶりに仕事に復帰するため、スマホでメールをチェックする。
しばらくした後で、そろそろ開いたはずのチェックインカウンターに向かおうと席を立ったとき、向こうからこちらに手を振って小走りで来る女性が視界に入った。
近くの知り合いに手を振っているのだと思ったが、周りには誰もいない。その女性は、静香に手を振っているのだ。
そしてあらためてその顔を見ると、しっかり見覚えがあった。それは、かつて勇作の妻であった、ミランダだった。
第14話の続きはこちら
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