恋するマザー Vol.5

「子持ちの女はやりたい放題ね」と20代の若い女子から言われてしまった、34歳の女

いつまで経っても、女は女でいたいー。

それは、何歳になっても、子どもができてママになっても、ほとんどの女性の中に眠る願望なのではないだろうか。

いつまでも若々しくいたいという願いや、おしゃれへの欲求、それに少しのときめき。自由やキャリアへの未練。

そんな想いを心の奥底に秘めながら、ママとなった女たちは、「母親はこうあるべき」という世間からの理想や抑圧と闘っているのだ。

◆これまでのあらすじ

専業主婦の翔子(34)は、7年前に辞めた会社の同僚たちと久々に再会し、一人だけすっかり「おばさん」になってしまったことにショックを受ける。

当時の上司の石本千尋が経営する会社に誘われ社会復帰を決意するも、出社初日に小学1年の息子が熱を出し、早速出鼻を挫かれるが…。


翔子は、ついに出社初日を迎えた。南青山のオフィスに到着してしばらく経っても、まだ緊張が収まらない。

当初の入社日より、1日遅れてのスタートだ。

初日から、息子・航太の発熱というまさかの事態に直面してしまった。

幸い、航太の熱はその日のうちに下がり、翌日には元気に登校した。それでも万が一学校から連絡があったらすぐに対処しようと、社長の千尋にあらかじめ伝えてある。

まずは入社が遅れてしまったことを、千尋に詫びるところから始まる。千尋は「こっちのことは気にしないで。それより航太くんは大丈夫なの?」と温かい言葉を掛けてくれた。

会社は完全フレックス制を導入している。子持ちのスタッフが多いので、出社や退社時間に融通をきかせたいという千尋の思いを実現させていた。

「結局、海外相手の仕事だから、時差があって定時も何もないのよね。だからフレックスの方が都合が良いの」

千尋は笑って、こうも続けた。

「それに、まだ夜泣きの赤ちゃんのパパやママもいるのよ。そのころって、親はずーっと時差ぼけ状態よね。親は会社の定時に縛られても、そんなの赤ちゃんとしては知ったこっちゃないでしょう。親が子供に合わせるためには、まずは会社が親に合わせないと」

まるで初日から休んでしまった翔子をフォローするかのように、千尋は会社のシステムについて説明した。

「ありがたいです。本当に。うちはもう小学生なので、つきっきりでお世話ってこともないのですが…」

「逆よ、逆。翔子、ここが正念場よ」

「正念場…?」

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