ブラックタワー Vol.14

憧れのタワマン暮らしのはずが、泥沼の人間関係に巻き込まれていく女…。「ブラックタワー」全話総集編

ーまるでお城みたいに、高くて真っ白な塔。私もあそこの住人の、一人になれたなら…。

ずっと遠くから眺めていた、憧れのタワーマンション。柏原奈月・32歳は、ついに念願叶ってそこに住むこととなった。

空に手が届きそうなマイホームで、夫・宏太と二人、幸せな生活を築くはずだったのに。

美しく白い塔の中には、外からは決してわからない複雑な人間関係と、彼らの真っ黒な感情が渦巻いていたー。

「ブラックタワー」一挙に全話おさらい!

第1話:「あの人が最上階に…?」憧れのタワマン暮らしに浮かれる妻が、誰にも言えない秘密

最初は、分不相応だと難色を示していた宏太だったが、熱心にタワマンの良さを語る奈月に説得される形で、渋々ながら内見に付き合ってくれた。

実際の部屋は想像以上に素晴らしく、宏太も熱心に不動産屋の説明を聞いていた。帰り道、すぐに二人でローン相談へいこうと提案してきた夫に、奈月は小躍りしたのだった。

そのあとはトントン拍子に話が進み、晴れて20階・2LDK58平米の一部屋が、奈月たちのものとなったのだ。

「行きましょ。私たちの新しい家へ。」

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第2話:「ドアの隙間から、誰かが覗いてる…」。優雅なタワマン暮らしを謳歌する妻を、戦慄させた出来事とは

ー会社行かなきゃ…。今日も、朝から会議だわ…。遅刻しちゃう。

何とか身支度を終えて家を出たのは、またもや出社時刻ギリギリだった。今日は永田が乗っていないことを願いながら、エレベーターを待っていたそのとき、奈月はぴくりと反応した。

ガチャリ。エレベーターホールに近い部屋の方向から、玄関の扉が開く音が聞こえたのだ。しかし、しばらくしても一向に人が来る気配はない。

ーあれ…?この間も、こんなことがあったような…

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第3話:「他の住民には秘密で、夜会いたい…」夫を誘う、美しきコンシェルジュ。彼女が握るマンション内の秘密

「おお。マンション内だけの集まりなのに、人数多いなー。」

宏太の言葉を曖昧に受け流しながら、奈月は素早くパーティールーム内を見渡した。

マンション住民で行われる”交流パーティー”で、過去の不倫相手と再び顔を合わせてしまうかもしれないー。

そんな不安を抱いた奈月は、なんとかして不参加の方向に持って行こうと画策したが、夫の勢いに負け、結局二人して訪れることになったのだ。

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第4話:「二人きりになるのは、危険だとわかってるのに…」。密室で、男女が秘密を共有してしまった夜

ーなによ、コレ..?

黒い封筒の中身を見た瞬間、奈月はとっさに辺りを見渡した。幸い、ポストルームには自分一人しかいない。

―一体、誰が…?

突然届いた宛名のない封筒には、重厚な見た目の割に、一枚の紙が入っているだけだった。しかし、それを見た奈月は全身の血の気が引き、胸にズシリと重石を乗せられたような錯覚に陥った。

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第5話:妻の元に届いた、得体の知れぬ1通の黒い封筒。「不幸の手紙」を送りつけた意外な隣人とは

予約しておいたのは、マンションから少しはなれたところにあるカフェバーだ。住民の誰かに見られては面倒なので、多香子さんとは別々にタクシーに乗って、現地集合にした。

平日の夜遅くだというのに、店内はそこそこ混んでいる。周囲の賑わいに乗じて弱音を吐く男に、彼女は優しい笑顔を向ける。

「交流パーティーにはあまり来られませんでしたけど、共働きの方も多いですよ。それに、柏原さんこそすごいなって、私思っているんです。夜遅くまでお仕事で疲れていらっしゃるでしょうに、とても紳士的で。…素敵です。」

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第6話:夫に隠れて、大金を受け取っていた妻。7年前に犯した過ちから、逃れられない恐怖

柏原夫妻がうちにご挨拶にいらした時、ふと、かつてこのマンションにいた、あるご夫婦のことを思い出しました。お二人とも広告代理店にお勤めで、華やかな雰囲気のそのご夫婦は、いまの柏原夫妻と同じ部屋に住んでいました。

そのころの私は、娘の子育てに四苦八苦する毎日を送っておりました。経営者の主人は毎日忙しく、ほとんど頼れませんでしたので。

ある朝主人を送り出すため、娘を起こさないようそっと玄関を開けると、エレベーターの方からあのご夫婦の会話が聞こえてきたのです。

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第7話:夫の居ない間に、突然家にやってきた来訪者。妻を襲った絶体絶命のピンチとは

このマンションに来てから、もう何年経つのでしょうか。初めは不安もありましたが、人間観察が好きな私の性には合っているようで、気付けば一番の古株になってしまいました。

タワーマンションでは、数百人の人間が同じ建物に住んでいるのですから、日々いろんなことが起ります。最近ですと、柏原ご夫妻の元に送られた不幸の手紙の犯人が判明したと伺いました。

内輪でちょっとした騒ぎになっていたようですが、非番だった私は、その場に居合わせなかったことをとても残念に思っていたのです。

ですが昨日、それよりも驚くべき場面に遭遇してしまいました。

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第8話:「夫にまた手を出したら、二度と容赦しない…」。愛した男の妻から呼び出され、窮地に立たされた女

「主人は、何かの間違いだろうと言うのですが…うちのポストに、こんなものが入っていたものですから。」

戸惑う奈月に向かって、永田夫人が差し出したのは、白い封筒だ。表に永田志帆様と書かれているのを見て、奈月は初めて夫人の名前を知った。

「あ…あの…」
「どうぞ、ご覧になって。」

永田夫人の言葉に、奈月は震える手で封筒を開ける。

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第9話:「絶対にいけないって、わかってるのに」。夫を疑う妻が犯してしまった、夫婦間の禁忌

今までも、香水をしみ込ませたハンカチを、彼の鞄にこっそり忍ばせたこともありますが、鈍い奥様はなかなかお気づきにならなかったようなので。今回は効果があって本当に良かった。

―次も、楽しみにしております。

私が送ったメッセージは、すぐに既読になりました。

結局、昨日は、終電と同時にお開きになりましたが、近いうちに私の相談に乗ってくださるそうです。私の相談が“恋の相談”だと知ったらどのような反応をするのか、今からとっても楽しみです。

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第10話:妻が持っていた、出所不明の大金。プライドを傷つけられた夫がとった、最低の行動とは

「宏ちゃん…これ、どういうこと?!」

僕が風呂場から戻るや否や、妻・奈月の怒り声が部屋中に響いた。その形相は、いままで見たことのないほど怒りに満ちている。

突然のことに訳が分からなかったが、妻の手に黒いスマホが握られているのをみて、嫌な予感が脳内を駆け巡る。

「え?ちょっ…あ。」

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第11話:女の嘘にコロリと騙される、悲しき男の性。孤独な中年男を手玉にとる、魔性の女のテクニックとは

「だから、いつも通りにっていってるじゃないか!」
「も、申し訳ありません」

新人らしきコンシェルジュに、なにやら男性が声を張り上げている。

―あれって…もしかして室井さん?

普段無口な隣人の思いもよらない行動に、奈月と宏太は、顔を見合わせた。

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第12話:「夫のこと、信じてたのに…」。隣人から渡された写真に写っていた、妻の知らない夫の姿

モニターには、同じフロアの室井の姿が映っている。俯き加減で、落ち着きなさそうに細かく足を動かしていた。

不幸の手紙事件以降、会えば挨拶は交わすが、その程度の仲だ。ましてや突然家に訪ねてくるような関係では、全くない。

正直、居留守を使おうかと躊躇したが、何かトラブルかもしれない。無いとは思うが、火事や泥棒被害が起きている可能性も、ゼロではない。

とりあえずモニター越しに対応しようと、息を整えて応答ボタンを押した。

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第13話:「夫を誘惑した女に、天罰を」。マンション内の人間関係をかき乱す女に、妻がとった行動とは

「大切な、話があるの。」

ようやく部屋に戻った奈月は、覚悟をきめて夫に向き合った。コンシェルジュとの隠し撮り写真について再び追及されると思ったのだろう。宏太は緊張した面持ちで、小さく頷いた。

「あの女…吉岡多香子とのことは、これ以上聞かない。数回友達として食事しただけっていう、あなたの言葉を信じる。あの写真も…ショックだけど、ただの介抱だっていうのなら、そう思うことにする。」

第13話の続きはこちら

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