ブラックタワー Vol.7

夫の居ない間に、突然家にやってきた来訪者。妻を襲った絶体絶命のピンチとは

ーまるでお城みたいに、高くて真っ白な塔。私もあそこの住人の、一人になれたなら…。

ずっと遠くから眺めていた、憧れのタワーマンション。柏原奈月・32歳は、ついに念願叶ってそこに住むこととなった。
空に手が届きそうなマイホームで、夫・宏太と二人、幸せな生活を築くはずだったのに。

美しく白い塔の中には、外からは決してわからない複雑な人間関係と、彼らの真っ黒な感情が渦巻いていたー。

奈月は、憧れのタワマン暮らしを始めるが、元不倫相手が同じマンションに住んでいることに加え、差出人不明の黒い手紙が届き窮地に立たされた。

やっと犯人を捕まえ一件落着に思えたが、実は奈月には、さらなる過去の秘密があったのだった。


吉岡多香子:私がコンシェルジュになった理由


このマンションに来てから、もう何年経つのでしょうか。

初めは不安もありましたが、人間観察が好きな私の性には合っているようで、気付けば一番の古株になってしまいました。

タワーマンションでは、数百人の人間が同じ建物に住んでいるのですから、日々いろんなことが起ります。

最近ですと、柏原ご夫妻の元に送られた不幸の手紙の犯人が判明したと伺いました。

内輪でちょっとした騒ぎになっていたようですが、非番だった私は、その場に居合わせなかったことをとても残念に思っていたのです。

ですが昨日、それよりも驚くべき場面に遭遇してしまいました。

昨晩、勤務を終えた私は、駅近くのスーパーに立ち寄りました。すると、見覚えのある黒いマセラッティーが、車道に停まっていたのです。

運転席の扉から降りてきたのは、最上階に住む永田様。そこまでは予想通りだったのですが、次の展開には大変驚きました。

なんと永田様は、ちょうど近くの店から出てきた柏原奈月様の方へ駆け寄り、笑顔で話しかけたのです。

周りを気にするように俯く奈月様と、次第に曇っていく永田様の表情から察するに、どうやらただのご近所話ではないご様子。

その後、1分足らずで永田様は去り、彼女もトボトボとマンションの方へ戻っていきました。

思い返せば、交流パーティーでも不思議なことがありました。手を取り合う柏原夫妻のことを、永田様はじっと見つめていらっしゃったのです。

そんな二人の姿を陰から見つめながら、私はなぜか、昔の夫のことを思い出していました。

【ブラックタワー】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo