2018.12.20
この愛のない世界で Vol.1—半年後—
「美佳ちゃん、飲んでる〜??さっきから携帯ばかりいじっているけど、こっちの会話にも入ろうよ!」
今日は、友達の紗弥加と葉月が開催してくれた食事会。楽しそうにビールを飲んでいる悠人が、人の良さそうな笑顔で会話に入れようとしてくれていた。
「ごめんなさい!ちょっと仕事のメールを返してて。もう携帯は触りません!」
そう言って、慌てて携帯の画面を机に裏返す。本当は仕事のメールなんかじゃない。ただ無意識のうちに、Instagramをぼうっと見ていただけだった。
「美佳ちゃんは、何してるの?」
「丸の内で、営業職で働いています」
「今彼氏はいないの?さっき幹事の紗弥加ちゃんが既婚者だって聞いて、ショック受けたんだよねー」
紗弥加と葉月は学生時代からいつも一緒にいる女友達。紗弥加は3年前に結婚しており、葉月は一匹の猫と、プラス若い彼氏と同棲中だ。
本当に誰も相手がいないのは、私だけだった。
「今日は紗弥加が私に向けて開催してくれた会で。彼女はあくまでも幹事役だから、参加者じゃないって言ってました」
「じゃあ美佳ちゃんは、今フリーっていうことでいいんだよね!?」
悠人は、大手広告代理店勤務で独身。年齢は32歳で結婚願望もあるらしい。人柄が良く、気遣いもできるし、周囲からの人望も厚そうだ。きっと、こういう人と付き合えたならば女性は幸せになれるのだろう。
でもこんな“いい人”に対しても、私の心は全く動いてはくれないのだった。
—美佳:今日はありがとうございました(^^)またみんなで飲みましょう!
解散してすぐに、紗弥加が作成してくれた食事会のLINEグループにお礼を打つ。すると、一通の個別LINEが届いた。
—悠人:今日はありがとう!良ければ、今度二人でご飯行かない?
携帯の画面を見つめたまま、ふぅっと小さなため息が漏れる。一旦保留にしよう。
食事会をし、出会い、連絡が来て誘われてご飯へ行く。永遠に繰り返されるこのルーティーン。
ここに、私の望む未来はあるのだろうか。
出会いを重ねる度に迷い、そして結果的に、私は恋から遠のいていく。
「連絡が来るうちが華だし、その中にもいい人がいるかもしれないんだから、一個一個の出会いを大切にしないと!」
紗弥加からは、そうやってよく怒られる。頭では分かっているけれど、心に嘘はつけない。
「みんな、どうやって彼氏とか見つけているんだろう」
学生時代は“付き合う”なんてもっと簡単だった。それなのに、今の私にはそのハードルが高すぎて、臆病になっていく一方だ。
そんな気持ちを抱えたまま家へ帰る気力もなく、少しだけ歩いていると、再び携帯が鳴った。先週別の食事会で出会った、裕也からだった。
—裕也:美佳ちゃん、何してる?今から広尾で飲まない?
せっかく時間合わせて友達といるのに、一人でも見られるもの今見る必要ある?って言いたい。すごく相手に失礼な気がする。
もっといい人がいる!
笑顔を取り戻して、福を引き寄せて幸せになって。
「可哀想な自分」から脱皮しよう。
シングルマザーの祈りでした。
【この愛のない世界で】の記事一覧
2019.02.27
Vol.12
「好きな人ができない」と嘆く美女の心を掴んだ、たった15文字のLINE。2人の男で揺れていた女の決断
2019.02.26
Vol.11
恋に迷走中の30歳女。東京砂漠で本当の愛を見つけられるのか?「この愛のない世界で」全話総集編
2019.02.20
Vol.10
「そんな男より、俺のところに来てよ」デートの帰り際に2人の男で揺れる女に囁く、狡猾な男
2019.02.13
Vol.9
「他の女と抱き合っていた夫と、一緒のベッドで寝るのはもう無理…」30歳の美人妻が崩壊した理由
2019.02.06
Vol.8
「別に、遊びじゃないから」西麻布の路地裏で強引に抱き寄せてくる男を、女が拒まなかった理由
2019.01.30
Vol.7
「うちの嫁としては迎えられない」恋愛結婚を禁じられ、父親が決めた“政略結婚”に甘んじた男の狡さ
2019.01.23
Vol.6
「今更ズルいよ・・・」決して結ばれることのない男からの甘い囁きに、復縁を期待して惑わされる女
2019.01.16
Vol.5
「彼のこと、本当に好きなの?」何も妥協できず一方通行の恋愛を繰り返す30歳・独身女の孤独
2019.01.09
Vol.4
「一番辛いのは、裏切られた私なのに…」。見知らぬ女に家庭を壊された妻が取った、夫への意外な態度
2019.01.03
Vol.3
「3ヶ月後には、名前も思い出せない人ばかり…」LINEの連絡先が増えるほど、孤独感を増す女
おすすめ記事
2021.05.18
恋のカルボナーラ
恋のカルボナーラ:元カレから“辛辣な理由”で振られてしまい…。心を病んだ女が、行きついた先とは?
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
- 関西
2018.08.18
ノリオとジュリエット
結婚に、恋や愛は必要ない。格差婚の現実に打ちのめされた、平凡すぎる男の絶望
2024.06.05
マティーニのほかにも
一橋卒の28歳エリート証券マン。上司から誘われ、日本橋のバーに渋々付いて行ったら…
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
2021.08.09
セルフ・ラブ~20代女子の矛盾~
望めばいつでも結婚できると思っていた…。”若妻ステータス”に取り憑かれた女の末路
2016.08.14
東京同棲白書
東京同棲白書:互いに同棲経験あり。不毛な同棲をくり返さないための1年計画
2019.09.29
オトナの恋愛論~解説編~
デート代、男がどこまで払うのが正解?「私も少し払います♡」と言ってくる女の本音とは
2018.05.17
ふぞろいな駐妻たち
ふぞろいな駐妻たち:「駐在員の妻」となった女。勝ち組妻たちの華麗なる世界は、天国か地獄か?
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
この記事へのコメント