—半年後—
「美佳ちゃん、飲んでる〜??さっきから携帯ばかりいじっているけど、こっちの会話にも入ろうよ!」
今日は、友達の紗弥加と葉月が開催してくれた食事会。楽しそうにビールを飲んでいる悠人が、人の良さそうな笑顔で会話に入れようとしてくれていた。
「ごめんなさい!ちょっと仕事のメールを返してて。もう携帯は触りません!」
そう言って、慌てて携帯の画面を机に裏返す。本当は仕事のメールなんかじゃない。ただ無意識のうちに、Instagramをぼうっと見ていただけだった。
「美佳ちゃんは、何してるの?」
「丸の内で、営業職で働いています」
「今彼氏はいないの?さっき幹事の紗弥加ちゃんが既婚者だって聞いて、ショック受けたんだよねー」
紗弥加と葉月は学生時代からいつも一緒にいる女友達。紗弥加は3年前に結婚しており、葉月は一匹の猫と、プラス若い彼氏と同棲中だ。
本当に誰も相手がいないのは、私だけだった。
「今日は紗弥加が私に向けて開催してくれた会で。彼女はあくまでも幹事役だから、参加者じゃないって言ってました」
「じゃあ美佳ちゃんは、今フリーっていうことでいいんだよね!?」
悠人は、大手広告代理店勤務で独身。年齢は32歳で結婚願望もあるらしい。人柄が良く、気遣いもできるし、周囲からの人望も厚そうだ。きっと、こういう人と付き合えたならば女性は幸せになれるのだろう。
でもこんな“いい人”に対しても、私の心は全く動いてはくれないのだった。
—美佳:今日はありがとうございました(^^)またみんなで飲みましょう!
解散してすぐに、紗弥加が作成してくれた食事会のLINEグループにお礼を打つ。すると、一通の個別LINEが届いた。
—悠人:今日はありがとう!良ければ、今度二人でご飯行かない?
携帯の画面を見つめたまま、ふぅっと小さなため息が漏れる。一旦保留にしよう。
食事会をし、出会い、連絡が来て誘われてご飯へ行く。永遠に繰り返されるこのルーティーン。
ここに、私の望む未来はあるのだろうか。
出会いを重ねる度に迷い、そして結果的に、私は恋から遠のいていく。
「連絡が来るうちが華だし、その中にもいい人がいるかもしれないんだから、一個一個の出会いを大切にしないと!」
紗弥加からは、そうやってよく怒られる。頭では分かっているけれど、心に嘘はつけない。
「みんな、どうやって彼氏とか見つけているんだろう」
学生時代は“付き合う”なんてもっと簡単だった。それなのに、今の私にはそのハードルが高すぎて、臆病になっていく一方だ。
そんな気持ちを抱えたまま家へ帰る気力もなく、少しだけ歩いていると、再び携帯が鳴った。先週別の食事会で出会った、裕也からだった。
—裕也:美佳ちゃん、何してる?今から広尾で飲まない?
この記事へのコメント
せっかく時間合わせて友達といるのに、一人でも見られるもの今見る必要ある?って言いたい。すごく相手に失礼な気がする。
もっといい人がいる!
笑顔を取り戻して、福を引き寄せて幸せになって。
「可哀想な自分」から脱皮しよう。
シングルマザーの祈りでした。