東京は、未婚率全国1位の独身天国。
人に深入りせず、きちんと自己防衛し、常に楽しさを求めること。それを守れば、この街では例えパートナーがいなくても毎日を楽しく生きられる。
しかしそんな刹那的な楽しさだけでは、満足できないこともある。私たちは時として、心の底から人との愛や絆を渇望するのだ。
「誰も人を好きになれない」と悩む、倉松美佳・30歳もそのうちの一人。
昔は、もっと簡単に人を好きになっていた。
愛することなんて、当たり前のようにできていた。
でもいつからだろう・・・?
恋をすることがこんなにも難しくなったのは。
最後に、本気で人を愛したのはいつ?
この東京砂漠で、果たして本物の愛は見つかるのだろうか―?
この季節になると必ず思い出す、1年前のあの日―。
ハラハラと粉雪が舞う中、表参道のけやき並木には暖色のイルミネーションが美しく光り輝いていた。
「ごめん、美佳とは結婚できない」
大好きだった慶太から婚約破棄を言い渡された時、私の周りだけ、まるで時が止まったようだった。1秒1秒が、スローモーションのようにゆっくりと流れていく。
季節外れの雪が降る表参道は楽しそうに写真撮影をする恋人で溢れ返っていて、私の目からは大粒の涙がこぼれた。
フラれた理由は、一言でいうならば“家柄の違い”。私の家は両親が幼い頃に離婚し、母が女手一つで私を育ててくれた。一方の慶太は、明治時代から続く某老舗メーカーの一人息子。
「美佳、愛してるよ。結婚しよう」
慶太からこの言葉を聞いた時、全身が震えるほどに嬉しかったが、結局向こうの親から承諾を得ることができなかったのだ。
何度も話し合いを重ねたがうまくはいかず、結局彼は“愛してる”はずの私ではなく、家を選んだ。
それ以来、私はうまく恋ができずにいる。
どんなに好きな気持ちがあっても、結局うまくいかないのだから…。そんな諦めの気持ちが、心の底にこびりついてしまった。
人と出会えば出会うほど、私は一層“愛”なんてこの東京という街にはそもそもなかったのかもしれない、と思うようになっていた。
この記事へのコメント
せっかく時間合わせて友達といるのに、一人でも見られるもの今見る必要ある?って言いたい。すごく相手に失礼な気がする。
もっといい人がいる!
笑顔を取り戻して、福を引き寄せて幸せになって。
「可哀想な自分」から脱皮しよう。
シングルマザーの祈りでした。