美しいひと Vol.8

「独りでいたくない…」本命の彼に失恋し、違う男に逃げた夜。女が心に抱く"ある打算”とは

美人は不美人より、生涯で3億円の得をする。

まことしやかに囁かれる都市伝説だが、あながち嘘とは言い切れない。美味しい食事や高価なプレゼントに恵まれる機会も、美人の方がやはり多いに違いない。

麗しくも華やかでもない自身の容姿にコンプレックスを抱いていた美咲麗華は、大学時代に学年一のモテ男・平塚勇太に恋をし、あっさり失恋したことで、ある決意をする。

−“美しさ”を金で買い、人生を変えてやる−

社会人となり整形で “美人”の仲間入りを果たした麗華は、遊び慣れたハイスペ男・俊介と男女の関係に

しかし大学時代からの親友・大山恵美を通じて初恋の彼・平塚くんとの食事に誘われた麗華は、自分を助けてくれた俊介を振り切ってまで一目散に会いに行く。

しかしその場で平塚くんに彼女がいることを知り、傷ついた麗華は再び俊介の部屋を訪れるのだった。


初めての告白


「はい、これ」

頭上から俊介の声がして、私はハッと顔を上げた。

ずぶ濡れというわけではなかったが、雨に濡れたまま突然部屋を訪れた私を、彼は嫌な顔一つせず家に上げてくれた。

「バスタオルと…着替え。男物だけど。シャワー浴びたら?風邪引くぞ」

精気を失ったようにぼんやり佇む私に、俊介は何も聞かず、ただ優しく接してくれた。

花音から庇ってくれた彼を一人店に残し、平塚くんの元へと走った私に。

「…ありがとう」

どうにか絞り出した声で呟き、バスルームへ向かおうと彼に背を向け歩き出す。すると不意に後ろから、温かな体温で体が包まれた。

「麗華、好きだ。…俺の女になってよ」

耳に流れ込む俊介の低く、甘い声は、私の心臓をキュッと締め付ける。

それは私にとって、人生で初めて経験する、男からの告白だった。

−好きだ−

その言葉が持つ魔法のような力を、私はこのとき初めて知った。

一人でどんなに足掻いても耐えきれなかった、血が滲むような失恋の痛みが、その瞬間にすっと消え去ったのだから。

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