美しいひと Vol.6

「整形女のクセに」同僚の告げ口で、彼に整形がバレた。金で美を買った女を襲う修羅場


花音がいなくなった後、私はしばし呆然と立ち尽くしていたが、「なんか、腹減ったな」などと呑気に呟く俊介に促され、気づけばとあるグリル&バーで、彼の隣に座っていた。

サラダやアヒージョ、鶏のグリルなどをオーダーしてから、俊介はどこか楽しげに語り出す。

「いや、正直な話、俺も最初は遊び…っていうか、本気じゃなかったんだけどね。麗華のウブな感じが新鮮だったのかなぁ。それなのに、いきなり音信不通とか…麗華ちゃんも酷いよね」

悪びれるでもなくそんなことを言い、最後は私を挑発するように覗き見た。

「でも俺そういうの、嫌いじゃないから。逆に燃えちゃうタイプ」

−この人、絶対変…。

先ほどの出来事がなければ、嫌悪感しか感じなかったと思う。しかし強気な言葉の空白に、これまでにはない親しみや情が滲んでいる気がするのは、私の勘違いだろうか。

「…屈折してるね」

私が呆れたように小さく呟くと、俊介はすぐに「それは、お互いさま」と被せてきた。

そうして私たちは思わず顔を見合わせると、プッと吹き出してしまった。

考えてみれば、初めて会ったあの夜、初対面にも関わらず彼の誘いに乗ったのも、抱かれてもいいと思えたのも、無意識ながら惹かれ合う“何か”があったからかもしれない。

俊介と一緒になってひとしきり笑ったら、なんだか胸が熱くなった。

しかしその時、テーブル脇に置いた私のスマホから、けたたましく着信音が鳴ったのだ。

「ちょっと…ごめん」

慌てて席を立ち、出口へと向かいながら応答する。電話をよこしたのは、恵美だった。

「麗華、どこにいる?今日ね、実はこないだの式典スタッフで打ち上げがあって、さっき終わったところなんだけど…平塚くんがね、この後よかったら麗華も呼んで、3人で飲みに行かないかって!」

「行く!」

恵美の声にかぶせるように、瞬間的に叫んでいた。

−また、ゆっくり会おうよ−

あの時、平塚くんが言ってくれた「また」が、ついに訪れた。このチャンスを、無駄にするわけにはいかない。

私は恵美に店の場所をLINEしてくれるよう頼むと、急いで電話を切り、俊介の元へと戻った。

「俊介くん、ごめんなさい。私、もう行かなきゃ…」

そして「え、ちょっと」という、俊介の戸惑う声が聞こえた時にはもう、私はバッグを掴み駆け出していた。


▶NEXT:10月25日 木曜更新予定
俊介を置いて店を飛び出した麗華。しかし待望の平塚くんとの再会で、思わぬ事実を知ってしまう。



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