美しいひと Vol.2

「すれ違う男という男が、私を振り返る」“美しさ”を金で買った女が実感した、外見至上主義の現実

美人は不美人より、生涯で3億円の得をする。

まことしやかに囁かれる都市伝説だが、あながち嘘とは言い切れない。美味しい食事や高価なプレゼントに恵まれる機会も、美人の方がやはり多いに違いない。

美咲麗華は、その名とは相反し、麗しくも華やかでもない自身の容姿にコンプレックスを抱いて生きてきた。

しかし大学時代に出会った平塚勇太との出会いが、麗華の運命を変えていく。

これは“美しさ”を金で買い、人生を変えてやろうと目論んだ、とある女の物語。


“美しい女”の仲間入り


憧れだった外資系ジュエリーブランドの内定を勝ち取ったとき、私は大げさではなく身震いをした。

そういった華やかでキラキラとした世界は、ずっと私には無縁だと思っていた。

私のように地味で華のない女は、遠巻きに眺めることしか許されないのだと諦めていた。

それがようやく、ついに、私も足を踏み入れることが許されたのだ。

−“美しさ”を手に入れれば、人生は変わる−

やはり、その考えは正しかった。

私は改めて、プチ整形に手を出した自分の勇気と決断を褒める。

真面目に業界研究もしたし、唯一の親友・恵美に手伝ってもらいながら何度も自己PRを練習した。それが内定獲得に繋がったことは間違いないだろう。

…しかしそれだけでは、絶対にない。

もし私の容姿が過去のままだったら、受かっていなかったに違いないのだ。

内定者が初めて一同に会した日、私はそう確信した。

なぜならそこには、もちろんレベルの差はあるにせよ、一人の例外もなく“美しい女”しかいなかったから。

「美咲さん」

帰りがけに声をかけてきた同期のひとりは、麗華が愛読している美容雑誌で見かけたことのある読者モデルだった。

橘花音(たちばな・かのん)という可憐な名の彼女は、その響きの通り色白で華奢。同性の私でさえ守ってあげたくなるような、愛らしい女である。

「同期の子たち、みんな綺麗だったね♡仲良くなれそうで良かったぁ」

悪気なくそんなことを言う彼女に、私は未だ練習中の、ぎごちない笑顔を向けたのだった。

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