離婚のハードルは低い時代。だが、その次の生活の実態は?
「ちょっと…頭が痛いよ〜」
翌日、隣でボサボサの頭を抱える亜美の声で目が覚める。
頭が痛いのは、当たり前だろう。
亜美は、シャンパンはボトルで頼み、その後もワインのグラスをテンポ良く空けていたのだ。もはや誰が主役だか分からないハシャギっぷりであったが、カナは彼女の明るさに随分と助けられた気がした。
「ほら、お水飲んで。シャワー入っておいで」
亜美を促し、カナ自身も寝ぼけた頭で身支度を始めた。
6歳の子供がいる奈緒子は、昨日夜遅くに帰って行った。カナがパーティで撮った写真をシェアしようと奈緒子のLINEアカウントを見ると、もうすっかり少年の顔をしている息子のアイコン写真が目に入る。
パーティの喧騒から一夜明け、眩しい朝の日差しが差し込むホテルの部屋で、”現実”が少しずつ少しずつカナの足元に迫ってくるようだった。
「私の人生なの、妥協なんてしたくない。だから離婚したのよ」
昨晩は、女友達相手に威勢良くそんな格好つけたセリフを言い放っていた。
だが頭の中には、浮気発覚時に司から言われた言葉も同時に蘇る。
「俺、カナのことは嫌いじゃないんだよ。でもさ…やっぱりもう、女として見れないっていうかさ」
いくら友達から美人と言われようが、一人の男からそんな風に女として失格の烙印を押されてしまった自分が、もう一度誰かに愛される日が来るのだろうかー。
不安が喉元までやってきたとき、亜美が威勢良くシャワーから出てくる音が聞こえた。
◆
「亜美、私気がついたの。口ではいくらでも強がれる。けどね、その後の寂しさとか虚しさと向き合うのって、思ってるよりキツイよ」
2人並んでホテルのスパに癒されながら、カナは思わず本音をこぼす。会話は聞こえているだろうに、さすが高級ホテルのセラピストは一流だ。絶妙にカナと亜美の会話をスルーしてくれる。
”離婚パーティだって、結婚式に負けないぐらい贅沢にやる”とという趣旨で、今だけは金額のことは考えずに自分を癒すことに決めていた。至福のマッサージにより漏れ出た本音に、亜美が力強く答える。
「そりゃそうよ。ていうか私なんて、あと2ヶ月で32歳、未婚、彼氏なし、結婚歴もなしなのよ。私の方が崖っぷちじゃない。こうなったら、2人で本気で婚活よ。いや、カナの場合…"再婚活"ね!!」
「再婚活?!」
司と結婚したのは、もう5年も前である。それに、学生恋愛の延長で結婚したから、カナは婚活というものを経験していない。
ニヤリと笑う亜美の意味ありげな表情を見て、カナはこれから起こる出来事に、一抹の不安を拭えないのだったー。
▶NEXT:10月31日 水曜更新予定
友人と共に”再婚活市場”に潜入するカナ。そこで待ち受けていたものはー?
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この記事へのコメント
キモっ
見た目が平凡な男性ほど、そうなりやすいのかも?
何よりそんな人との間に、子供がいないのが、救いですね。これからの再婚活、色々ありそうだけど、自分に自信持って、楽しんで出来るといいね。