愛しのドS妻 Vol.11

「一生、許さない」夫の窮地を救った美しき賢妻が、ふいに見せたドSな本性

イベント会社を経営する平野貴裕(ひらのたかひろ)・35歳。

ほんの出来心から不倫関係に陥った奈美子に渡された手紙を、妻である華に見つかってしまい修羅場に発展する。

慰謝料300万円を支払い、さらには高級時計までプレゼントしても妻の怒りはおさまらない。

しかし華の交通事故をきっかけに大事なものに気づいた貴裕は、奈美子との関係を一方的に解消。しかしそれに逆上した奈美子が暴挙に出る。

結局、華が不倫相手を一蹴一件落着となるのだった。

が、一難去ってまた一難。貴裕の会社のトップ営業マン・乾に引き抜き疑惑が持ち上がる。

「私に策がある」と言う妻・華の真意とは?


ドS妻の涙


青山一丁目にあるタワーマンションの一室。

貴裕&華夫妻が主催するモロッコパーティーは、スパイスの香りと楽しげな笑い声に包まれていた。

思い出話がひとしきり盛り上がったころ、出張シェフがタジン鍋で煮込まれたラム肉とクスクスをサーブする。

「じゃあ次は、赤を開けましょうか」

妻はそう言って、脇に控えるワインボトルを手に取った。

営業スタッフの乾、そして事務スタッフの葵のグラスに赤ワインを注ぐ華。

「本当、懐かしいわね」

貴裕が異変を感じたのは、小さく呟いた華の声が震えていたからだ。

「華…?」

突然黙り俯いた彼女の顔を覗き込むと、彼女はなんと、大粒の涙をぽろぽろと零しているではないか。…ついさっきまで、けらけらと声を立てて大笑いをしていたというのに。

妻の急変ぶりに貴裕は驚き絶句する。しかもあの華が、人前で涙を見せるなんて。

これまでの結婚生活で、貴裕が華の涙を見たのはほんの数回だ。テレビでパピーウォーカー(盲導犬候補の仔犬を育てるボランティア)のドキュメントを見たときと、つい先日、交通事故に遭ったときくらいのものである。

「華さん、どうしたんですかぁ…やだ、なんか私まで泣けてきちゃう」

おそらく酒に酔っているのだろう。そんな華の様子を見た葵までがなぜか瞳を潤ませはじめ、ホームパーティーのムードは一変するのだった。

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