愛しのドS妻 Vol.6

愛しのドS妻:「夫婦の絆を守りたい」浮気な男が下した、冷酷な決断

青山でイベントプロデュース会社を経営する、平野貴裕(ひらのたかひろ)・35歳は、ほんの出来心から取引先の奈美子と不倫関係に。

すでに関係は解消していたが、別れ際に奈美子から渡された手紙が華に見つかってしまう

キレた妻・華は即座に浮気相手を特定し、奈美子に慰謝料を請求。

勘弁してほしいと懇願するも、華から「奈美子に慰謝料を支払わせるか、そうでないなら離婚する」と迫られ、貴裕は渋々300万円を肩代わりする

さらには300万円の高級時計までプレゼントさせられたにも関わらず、華は強硬な姿勢を崩さない。

我慢の限界に達した貴裕は、家に帰らずホテル住まいを開始。

そこに再び奈美子が現れホテルのバーで密会するが、そこに華の緊急事態を知らせる電話が入る。


病室にて


無我夢中で病室にたどり着いたとき、貴裕の足は情けないほどに震えていた。

−もし万が一、華に何かあったら…。

どうにか間に合った長野行き最終新幹線“あさま”の中でも、貴裕は延々と浮かぶ悪い想像を繰り返し繰り返し打ち消した。それはもう、息をするのも忘れるほど必死で。

自分にとって、華の存在がどれだけ大切でかけがえのないものであるかを痛感する。

そんなこと、頭ではずっと理解していたはずなのに…。

「華…」

薄暗がりの中を一歩、二歩と進み、貴裕はベッドの上に横たわる人影に向かって呼びかけた。

ゆっくりと頭がこちらに動き、華の目が自分を捉える。

「貴裕…来てくれたの」

そう呟く華の声はとてもとてもか細く掠れていて、貴裕は胸がぎゅっと締め付けられる思いがした。

「当たり前だろ…ごめん。本当に、ごめん。ひとりにして悪かった」

ベッドに力なく置かれた手を、握りしめる。

その手は驚くほど冷たく、貴裕は華を温めるためならば自分の体温をすべてあげてもいいとさえ思った。

「ありがとう」

そう言って、静かに微笑む華。

ぎごちない笑顔ではあったが、それでも貴裕の心を救うには十分だった。

華のことは、俺が守る。絶対に。

妻の白く美しい横顔を眺めながら、貴裕はその夜、何度も何度もそう誓った。

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