ビットコインで一儲け
外国人観光客向け、日本文化体験施設 “HANA-HARE銀座”のアイデアを思いついたのは、昨年末。
GINZA SIXのDiorでスカーフを購入し、併設のカフェ『Café Dior by Pierre Herme』で一息ついていた時のことだ。
(※こちらの店舗は、現在閉店しております。)
GINZA SIXの客層自体もそうだが、周りを見渡すと外国人、特に中華系観光客の姿ばかりが目につく。
−最近の銀座は、日本人の方が少ないくらいよね。東京オリンピックに向けて、ますます外国人が増えていくのかしら…。
ぼんやりと考えて、「そうだわ」と思い至る。外国人観光客が多いなら、銀座でインバウンドビジネスをするのはどうだろう。
しかも最近はモノ消費よりコト消費、「体験を買う」時代だとよく耳にする。
それならば、これまでに培ったサロン運営のノウハウを使い、日本文化を気軽に体験できる施設を作れば受けるのではないか。
もともと外資系航空会社でCAをしていたマリは英語が堪能であるし、かつての同僚に中国語を話す友人もいる。茶道や着付けの講師を頼めそうな人物も、すぐに2、3人候補が挙がった。
あとは銀座に箱を用意するための資金が必要だが、それに関してもマリには当てがあったのだ。
2017年のはじめ、まだビットコインが10万円前後を推移していた時代。マリは信頼できる慶應大学の同級生から勧められたのをきっかけに、数十万の投資をした。
当時、まだビットコインなど世間一般では“得体の知れないもの”でしかなかった。
しかしマリは同級生からその話を聞いたとき、直感で可能性を感じた。なんの知識もない状態だったが、友人から教えてもらったWEB記事を読み漁り、Twitterに流れる情報を取捨選択した。
そこに書いてある内容のほとんどは理解不能だったが、マリは要点を掴むスキルに自信がある。得られた情報を自分なりに咀嚼した結果、「買って絶対に損はない」と判断したのだ。
そして2017年末。
ビットコインがあわや200万円を超えるまでに急騰したタイミングで、マリは一部を利確。その資金を元手に、銀座のとあるビルの一室をテナント契約したのである。
◆
“マリ先生!テレビ見ました!”
“さすがマリ先生ですね。テレビで見てもお綺麗でした♡”
“かっこいいです!すっかりビジネスウーマンですね”
マリには、サロネーゼ時代からマリを異様に崇拝し、自称“マリエンヌ”などと名乗っている熱烈な信者たちがいる。
そのマリエンヌたちから続々と届くLINE通知を眺めながら、マリはひとりほくそ笑んだ。
実はこの日の昼間に放送されたワイドショーでインバウンドビジネスの特集があり、“HANA-HARE銀座”がおよそ5分取り上げられたのだ。
もちろんマリも代表としてばっちり紹介された。「噂の美人経営者」という枕詞付きで。
気分良く見渡した、窓の外。二子玉川のタワーマンション42階からは、瞬く夜景が眼下に広がっている。
もう見慣れたはずの景色ではあるが、不思議と飽きることはない。下界を高みから見下ろす快感は、いつだって気分を高揚させてくれるのだ。
LINE通知は、未だ続々と届いている。
賞賛の言葉に気を良くしたマリは、録画してあるそのワイドショーをもう一度見ることにした。
羨望は麻薬である。
その甘美な味わいを知ってしまったら最後、“ただの主婦”になんて、もう二度と戻れない。
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「本物」を主張し続けたお嬢様サロネーゼは、今。
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この記事へのコメント
ビジネスの才覚がある人は違いますね。
最近新しい連載が増えて毎朝楽しみ。