二子玉川の妻たちは Vol.2

二子玉川の妻たちは:カリスマ・サロネーゼの心の隙間を埋めた、羨望という名の麻薬。

結婚は、女の幸せ。

そう考える種類の女にとっても、結婚は必要条件に過ぎない。

結婚しただけでは満たされない。女たちの欲望は、もっと根深いものだ。

商社マンとの結婚を機に、損保OLからサロネーゼに転身した由美。

サロンオープンに浮かれるも束の間、由美の前に強敵が現れる?


子どもを産まない女は不完全?


銀座駅から徒歩6分。高級マンションの1室にある、ポーセラーツサロンLuxe。

レッスンを終え、1人で居るには広すぎるリビングで、マリは引っ越しの荷造りに追われていた。

Luxeは東京で1番人気のポーセラーツサロン。会員数はゆうに200人を超える。そのため白磁や転写紙など材料が1部屋分あって…考えただけで眩暈がする。やっぱり、すべて業者に頼むべきだった。

もう私1人の身体じゃないのだから、無理は禁物だ。

マリは、身体中の優しさと愛しさを凝縮させて、膨らみ始めたお腹に手をやった。結婚して6年。ついに、待望の、待望の第一子を授かった。

二子玉川への引っ越しも、子育てを見越してのこと。今や、二子玉川はママとなった女性憧れの地。女性の羨望を受けて生きる私に、ふさわしい街だ。

四ツ谷で開業医をしている夫の病院からは遠くなるが、マリと子どものためなら、と快諾してくれた。

やっと、「完全」な私になることができた。

思えば、ピースの足りないパズルを必死にカモフラージュしてきたような6年だった。



「子どもを産まないと、女として不完全っていう気がしない?」

6年前。
29歳で結婚したマリのお祝いと称したランチ会で、2児の母となったCA時代の先輩が、そう言った。

夫とはスピード婚だったからしばらくは2人の生活を楽しもうと思って…というようなことを話したら、悠長なこと言ってちゃダメよ!と諭された。悪気はないのだが、お節介で、少々思慮に欠ける先輩なのだ。

不完全。

その言葉はマリ個人に向けられたものではなかったが、鋭利な硝子の破片となって心に突き刺さった。

当初は、29歳新婚のマリにとっては、気にもならないような小さな傷だった。

しかし、年月の経過とともに奥深く侵入した硝子の破片は、少しずつ、少しずつ心を抉っていく。

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