京都ちゃん Vol.8

京都ちゃん:優しい婚約者がいても…不完全燃焼で終わった恋は、いつも女を惑わせる

生粋の京おんな・鶴田凛子(26歳)は、西陣で呉服店を営む京野家の跡取り息子・京野拓真と婚約中。

義母の過干渉に苦しむ凛子に、昔ささやかな恋心を抱いていた竜太から食事の誘いが。

拓真に嘘をつき密会した凛子は、竜太の言葉に心が揺れてしまう。

義母の横暴はますますエスカレート。だが婚約者・拓真は事なかれ主義で我慢の限界に。

婚約破棄を考え始めた凛子は、ついに拓真に感情をぶつけるのだった。


穏やかな週末


拓真の誘い(というより、義母の命令)を断った週末、凛子は実家でのんびりと過ごした。

−私、ずっとお義母さんの言いなりにならなあかんの?

あの日、凛子がついに爆発させた感情を、拓真は思いがけず男らしく受け止めてくれた。

「…嫌な思いさせてごめん。母さんには僕から話しとくから」

溜め込んだ膿を吐き出すようにして叫ぶ凛子とは対照的に、彼は動じず、静かにそう言って電話を切った。

それはまるで、こうなることを予期していたかのようでもあった。

その後、拓真が義母に何をどう伝えたのかは定かでないが…少なくともそのおかげで、凛子は久しぶりに平和な週末を迎えることができたのだ。


「凛子。拓真くんとはあれか…順調なんか」

水入らずの夕食となった席で、父が日本酒をちびちびと飲みながら凛子に問う。

「別に何も…問題はないよ」

「そうか」

凛子の答えを聞いて、父はわかりやすくホッとした表情を浮かべる。

「会社のほうも雄一がずいぶん頼れるようなって肩の荷が下りたわ。凛子にも無事に嫁いでもらって、そしたらお父さんはもう、お母さんと隠居生活を楽しむだけや」

父はそう言って、満足げにお猪口を口に運ぶ。

雄一というのは、父とともに二人三脚で和菓子屋を盛り立ててきた実弟の長男である。父の引退後は、この雄一が社長を継ぐ予定で話が進んでいるらしい。

安心したように笑う父の顔を見たら、凛子はやはりそれ以上のことを言う気にはなれなかった。

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