シバユカ Vol.9

シバユカ:モテ男との恋愛は一か八か…勝機を掴むのは、磨き抜かれた直感をもつ女

この時、もし彼が腕を掴んだり強引に引き止めるなどしたら、私はきっと頑なに拒んでいただろう。

しかし彼の反応は、私の予想に反するものだった。

「…ちょっと待って。そんなに俺のこと信じられない?」

そう呟く一ノ瀬先輩の声はひどく悲しい響きで私の耳に届き、ハッとして見上げた彼の瞳はまるで子犬のように潤んでいた。

それは私に、信じてあげたい、と思わせる魔力を宿していた。

「ユカちゃんに信用してもらいたくて、俺なりに色々努力してるつもりなんだけどな…」


淋しそうに呟く彼の言葉もすべて作戦だというなら…潔く、私の完敗だ。

しかし一ノ瀬先輩とふたたび目と目が合ったとき私は、騙されているならそれでもいい、と思ったのだ。

私はもうすでに、一ノ瀬先輩に恋をしていたのだろう。

そしてその瞬間をすかさず捉えるように、彼は私を抱き寄せ、唇を重ねたのだった。


24歳の秋。

その日の夜、『プリマヴェーラ』でディナーを楽しみながら私は一ノ瀬先輩に改めて告白をされ、私は彼と正式に付き合いを始めることになった。

「30歳になる前には、今勤めてる商社は辞めて家業を継ぐことになるはず。そしたらきっと今よりさらに仕事三昧になってしまうと思う......


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