
朝子と亜沙子:2人の女の仁義なき闘いが今始まる。トップセールスの座に君臨する、絶対的女王の存在
ここはとある証券会社の本店。
憧れ続けた場所についに異動となった、セールスウーマン・朝子。
そこでは8年前から目標としていた同期の美女・亜沙子が別人のように変わり、女王の座に君臨していた。
年齢なんて意味を持たず、数字の出来る者がヒエラルキーの頂点に立つ営業の世界で、朝子は勝ち残ることができるのか?
数字と恋をかけた2人のアサコの闘いの火蓋が、今切られるー。
「よし!完璧ね…!」
朝子は、全身をくまなく確認した後、鏡に向かって笑顔を浮かべてみる。
営業スマイルをチェックしながら、いつもにも増してパワーがみなぎるのを感じていた。
中川朝子、30歳。日系証券会社で働く彼女にとって、今日はこれまでで最も特別な日だ。
素直で前向きな性格と、ひたむきな努力のおかげか、ここ数年は常にトップクラスの営業成績をおさめてきた。
そして入社8年目にしてようやく、憧れの本店で働けるチャンスを手にしたのだ。
本店と言えば、ランキングの上位に名を連ねる優秀なセールスが働く営業社員の聖地である。
―そんな人達と肩を並べて働けるなんて、夢みたい…。
朝子自身も、営業は自分にとって天職だと思っている。自分に喝を入れようと、鏡の中の自分に向かって朝子は言った。
「本店でも必ず全国ナンバーワンに輝いてみせる…!」
◆
その日、朝子は総勢100名以上の社員を前にしていた。本店長が皆に向かって朝子を紹介する。
「中川さんの事を知ってる人も多いと思いますが、以前の自由が丘支店で全国ナンバーワンを獲得した、表彰常連のセールスです。」
本店長は「本店でもガンガン数字をやってね。期待してるよ。」と続け、朝子は笑顔で相槌を打った。
そのとき、どこかから自分を見つめる鋭い視線を感じて、朝子は思わずきょろきょろと辺りを見回す。
そして、圧倒的なオーラを放つ女性と目があった。
その女は、スラリとしたモデルのような体型で、姿勢良く腕を組みながら朝子のことをじっと見つめている。
ーあれは確か…今井亜沙子さん…。
朝子は以前にも、彼女に目を奪われた事があったのを思い出した。それは、8年も前のことだ。
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人を大事にしない会社は絶対潰れてく。