悪妻 Vol.5

悪妻:目覚めたら姿を消していた妻。疑心暗鬼が止まらぬ束縛夫の、歪んだ愛

東京には、いろいろな妻達がいる。

良き妻であり、賢い母でもある良妻賢母。

夫に愛される術を心得た、愛され妻。

そして、あまり公には語られることのない、悪妻ー。

これは、期せずして「悪妻」を娶ってしまった男の物語である。

女性の美に並々ならぬ執着を持つ藤田は、若く美しい妻、絵里子結婚するも、振り回され続ける。


目覚めたら、消えていた妻


眩しいほどの日差しで、藤田は目を覚ました。

独り住いの時とは違う、陽の光が当たる大きなベッド。ここで寝起きするのにも、藤田はようやく慣れてきたように思う。

だが、いつもと少し感覚が違うことに、すぐ気がついた。

横に寝ているはずの絵里子がいないのだ。

いつもは、自分よりもずっと後に起きてくるはずの絵里子。

シーツを確認すると、だいぶ冷たい。一体、いつからいないのだろうか。

急いでサイドテーブルのメガネをかけ部屋中を探したが、絵里子の気配はない。

「あいつ、どこに行ったんだ…?」

他の部屋にいるのかもしれないと思い、リビング、バスルームと一通り見て回る。しかし、絵里子の姿はどこにもない。その時、スマホのアラーム音がなった。

ー午前6時。

絵里子のためと引っ越したここ広尾のマンションから、大手町の会社まではドアツードアで40分近くかかる。

必然的に以前より朝早く起きることになった藤田だが、そんな暮らしを続けているうちに自然に体が午前6時前に目覚めるようになったのだ。

アラームをオフしようとスマホを見ると、消えた絵里子からのLINEがきていた。

ー最近の藤田さんの度を越した束縛には辟易しています。帰りたくなったら帰ります。絵里子

にっこりと微笑む絵里子の自撮りのアイコンが、このメッセージの冷淡さとそぐわず、藤田は奇妙な感覚を覚える。

ここを出て、絵里子は一体どこに泊まるというんだ?

だが、”度を越した束縛”というものに少しだけ身に覚えのある藤田は、その場で悶々としてしまった。

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