A1:様子見のデート。つまらなかったら早めに帰れるための布石
ハヤトさんが予約してくれたのは、『十番右京 恵比寿店』だった。
麻布十番のお店の方には何度か足を運んだことがあったけれど、恵比寿店は初めて。ナイスチョイス、と心の中で呟きながら、店に入った。
店内は和と洋のテイストがミックスされており、斬新なデザインだった。また、ルイ・ヴィトンのモノグラム柄の畳の縁やコースターなど、見ているだけで面白い。
「十番にある右京とまた雰囲気が違って、面白いですね!」
「本当だよね。でも、十番店の名物料理は、恵比寿店でも楽しめるみたいだよ。」
大好きな「海の卵がけご飯」を思い出し、思わず生唾を飲み込む。ハヤトの店選びは、合格だった。
話題のレストランに行けるのはとても嬉しい。ある意味、デートの醍醐味でもある。
初デートだもの。やっぱり、女同士では行けないようなお店に連れて行って欲しい、というのが女子の本音だと思う。
「ハヤトさんは、十番店の方にもよく行かれるんですか?」
そんな会話が糸口となり、仕事や家族構成などを話しながら、食事は楽しく進んだ。
実は最初、私はハヤトさんを警戒していた。
人を職業で判断してはいけないのかもしれないが、代理店勤務の28歳。遊びなれていると思うし、女性の扱い方もうまい。
そして、初対面の時から何となく私に好意があるのは伝わってきた。
一緒にお食事には行きたいけれど、実際に二人で食事に行ったらどうなのだろうか?楽しくない場合もあるし、強引に2軒目に付き合わされる可能性もある。
だから、私はデートの前日に、布石としてこの言葉をLINEで送った。
「明日朝が早い」、と。
この言葉さえ事前に伝えておけば、どんな状況においてもエクスキューズできる。つまらなかった場合は1軒目で帰れるし、強引に誘われぬよう、何となく防御線を張れる。
そして今回のように、楽しかった場合はこう言えばいい。
「せっかくですし、もう1軒、行きますか?」
最初から2軒目に行く流れよりも、最初はダメかもと思わせておきながら行けるようになった方が、「デートが楽しい」という思いを伝えられる気がする。
「時間は大丈夫?」
ハヤトさんが言葉では心配しながら、でも顔は嬉しそうに微笑んでいる。
「大丈夫です、ちょっとだけなら。」
こうして私たちは2軒目のバーに移動した。そして私は、2軒目の彼の行動で、早々に帰る決意をする。
この記事へのコメント
肘が当たる狭さだったから、椅子の後ろに腕を回すのも優しさだと思うけど…
これで嫌になっちゃうんだ。
彼女の方こそ相手の性格なんか見てないで、どんな店に連れて行くか&下心出すかだけで見てるんじゃない?と思った。