2017.07.26
東京マザー Vol.15子を産み、子を育て、家を守る。
昔からあるべき女性の姿とされてきた、“良妻賢母”。
しかしその価値観は、現代においてはもう古い。
結婚して子どもを産んでも、男性と同等に働く女性が増えた今こそ、良妻賢母の定義を見直す時だ。
家庭も、仕事も、子育ても、完璧を目指すことで苦しむ東京マザーたちが模索する、“現代の良妻賢母”とは、果たしてどんな姿だろうか。
「東京マザー」一挙に全話おさらい!
第1話:時短勤務は戦力外?!育休あけの女性がぶつかる、よけいな気遣いと圧力
仕事への復職は、楽しみだった。まだ柔らかい髪の毛の間から、ミルクのような、ヨーグルトのような、赤ちゃん独特の匂いを放つあかりと一緒に過ごす時間は、もちろん何よりも愛おしい。
だが、社会の一員として育休前と同じように責任ある仕事を続けたいという思いも強い。ただひとつ、佳乃が頭を抱えていることがある。時短勤務とゆり子の存在だ。
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第2話:母親になったら、女をアピールしちゃだめ?独身女と既婚女の深まる溝
佳乃が復職した初日、彼女のデスクに置いてあるバッグを見て、ゆり子の胸の中では黒くてどろりと重たい感情が広がった。
おそらく買って間もないであろう、セリーヌのラゲージ ファントム。端からは、パステルカラーの動物がプリントされたタオルが覗いてた。その不似合いな組み合わせに、ゆり子は大きな違和感を覚えた。さらに、こちらもおろしたてのように綺麗な、5cmはあるヒールを履いている。
―え、これで保育園の送り迎え……?
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第3話:雑誌に出るようなワーママなんて大嘘!子どもを持って働く女の過酷な現実
希はゆり子と佳乃、どちらからも可愛がられているため、どちらか一方に肩入れするつもりはない。あくまでどっちつかずの、絶妙なバランスを保っている。 ただ今回ばかりは、ゆり子は少し言いすぎではないかと思っている。
時短勤務の佳乃に対して、意見があることは理解する。だが、ゆり子がここまで言うのは、やはりあの噂が真実であることの証拠だろうと、思わずにはいられないのだった。
あの噂とは…。
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第4話:仲良し夫婦のはずが。育休明けに生じた、夫婦関係の亀裂
いつも穏やかで、柔らかな笑みを絶やさない佳乃。彼女は結婚する前も結婚した後も変わることなく、いつも紀之を豊な愛情で満たしてくれる。
こんな特別な日常が、これから先もずっと続いていくのだと思っていた。
佳乃が復職するまでは……。
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第5話:完璧主義の女性は要注意。夫が洗った食器を、あとからこっそり洗い直す妻の葛藤
結婚前と同じように仕事をこなし、家庭の雑事も手を抜かない。キッチンは、マンション購入当時と同じようにいつもピカピカで、余計なものは目につく場所に置かない。
例えば急にインテリア雑誌から取材のオファーが来たとしても、いつでも対応できるくらいに、それは整理整頓されていた。たとえ子どもが生まれても、自分ならこのスタイルを崩さずに今まで通りやっていける。そんな自負があった。復職するまでは。
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第6話:未婚女が既婚者の愚痴を言うと「ただの嫉妬」と片づけられる、不条理な現実
付き合ってきた男性は大勢いるし、素敵な思い出もたくさんある。中には結婚を考えてくれた男性だってもちろんいる。そんな彼らとの“タラレバ”は特にないのだが、紀之に関してはそうではない。
唯一、喉に刺さった魚の骨のように、紀之のことだけは心の奥深いところに嫌な感覚をずっと残している。
それは、付き合わなかったからだろうか。自分のような女には、紀之のような男性こそ適しているのだとわかってしまったからだろうか。あるいは、佳乃の夫だからだろうか。
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第7話:刷り込まれた「良妻賢母」という幻想。理想の自分になれず、一人で苦しむ女
昨夜、紀之から「ごめん、今夜は飲んで帰る」と連絡が来たときから、嫌な予感はしていたのだ。
あかりが生まれるまでは、そんなことはよくあった。佳乃だって同じ会社で仕事をしているのだ。同僚などから突発的に誘われたりすることぐらい、十分理解している。
だが、あかりが生まれてからの紀之は、突発的な飲み会はほとんど行かなくなり、取引先との会食や歓送迎会には行っても、1次会で帰ってきていた。そして帰ってくると、紀之の担当である夜の食器洗いをしてくれていたのだ。それが、昨夜は違った。
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第8話:子供は欲しいけど、子育てで余裕を失くすのは嫌。現実的な女の結婚の条件
付き合って2年近くになる昌大とは、お互い恵比寿に住んでいるため、平日でもどちらかの家に泊まり合うような、半同棲状態が続いている。 同棲ではない、半同棲。逃げ場所は残しておきながらも、一緒にいたいだけ一緒にいられる。希はこの関係を最高だと思っている。
残業の後、くたくたの身体で昌大の家に行った時、洗濯機から溢れている洗濯物を見ても、シンクに溜まった食器を見ても、見て見ぬふりができるのは、まだそこが自分の部屋ではないから。
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第9話:初めて、夫婦別々で寝た夜。一度入ってしまった亀裂は、もう元には戻らない
「お子さんが生まれてもそんなに仲良しなんて、羨ましいです~!」
希にそう言われて、悪い気分ではなかった。だが翌日佳乃は、社内の仲が良い同僚から嫌な話を聞くことになった。
「佳乃って、ほんと心が広いわよね」
そう言われて、最初は何の事だかわからなかった。だが、詳しく話を聞いて、佳乃は言葉を失った。
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第10話:妻から「離婚」を告げられた夜。家庭円満だと思っていたのは、夫だけ
「何か言ってくれよ」
時間が止まってしまったかのように、何も反応しない佳乃にもう一度言った。彼女は、あかりが寝ているベビーベッドにちらりと目を遣り、大きく息を吐きながらゆっくりと立ち上がった。
無言のまま、右の人差し指を出して「リビングに行きましょう」と合図してきた。その時佳乃の瞳が、薄暗い部屋の中できらりと光った。リビングに移動すると、佳乃から思いがけない言葉を聞き、紀之は膝から崩れ落ちそうになった。
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第11話:「良い子」として育った女性が陥る。できない自分を責めて追い込む罠
離婚を切りだすことになるなんて、佳乃自信が一番驚いていた。紀之がゆり子と2人で食事に行ったことを知らされた時のショックは、思っている以上に大きかった。
他の女性であれば問題なかった。同僚の女性と2人きりでも、深夜に帰ってこようとも、紀之のことは信頼しているのだから、少しくらいは怒るだろうが、すぐに許していたと思う。
だが、相手がゆり子であれば話は別だ。夫が昔、好きだった女性。その存在はやはり特別で、気にせずにはいられない。
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第12話:結婚、出産、育児…。人生と仕事を秤にかけねばならぬ、不自由な女たち
この数年、音楽フェスが夏の定番となり、レコード会社にとって夏は年末と同じくらいの繁忙期となっている。
ゆり子が所属しているのは、コンサート関連のグッズを制作する部署のため、夏の忙しさは尋常ではない。制作されたグッズの数が100個単位で違っていたり、配送手配でミスが発覚したりと、連日部署内は混乱気味だ。
そんな、ただでさえ多忙な時期に追い打ちをかける出来事が起こった。
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第13話:もっと早く気づけたはず…!子どもより仕事を優先させた女の罪悪感
「熱がどんどん上がっているので、すぐに病院に連れて行ってください」
いつも対応してくれる若い保育士にそう言われて、佳乃は少しの不安を感じる。
どうせ、いつもみたいにケロッとしているだろう―。そう思っていた自分を責めたくなるほど、あかりの身体は熱かった。急いでタクシーを捕まえ、かかりつけの小児科へ行った。
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第14話:ワーママには仕事を辞める理由がたくさんある。辞めない理由は見つからない
「紹介状は拝見しました。たしかに、肺に合併症が疑われますので念のためきちんと検査しておきましょう。数日入院してもらえますか?」
「入院……」
佳乃は反射的にその言葉を繰り返した。目まぐるしい状況の変化についていくのがやっとだった。
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