東京マザー Vol.6

東京マザー:未婚女が既婚者の愚痴を言うと「ただの嫉妬」と片づけられる、不条理な現実

子を産み、子を育て、家を守る。

昔からあるべき女性の姿とされてきた、“良妻賢母”。

しかしその価値観は、現代においてはもう古い。

結婚して子どもを産んでも、男性と同等に働く女性が増えた今こそ、良妻賢母の定義を見直す時だ。

家庭も、仕事も、子育ても、完璧を目指すことで苦しむ東京マザーたちが模索する、“現代の良妻賢母”とは、果たしてどんな姿だろうか。

レコード会社で働くゆり子は、育休から時短勤務で復職した佳乃に対して不満を募らせていた。不満の理由のひとつには、佳乃の夫・紀之との過去が関係しているのだった。


ゆり子が頻繁に紀之から誘われていたのは、約8年も前のことだ。

ゆり子が29歳、紀之が31歳の時で、佳乃が転職してくる前の出来事だった。

誠実だけど、つまらなそうな人。

それが当時のゆり子が思っていた、紀之の印象だった。

ゆり子は学生の頃から、野心を隠すことなく......


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