東京マザー Vol.9

東京マザー:初めて、夫婦別々で寝た夜。一度入ってしまった亀裂は、もう元には戻らない

子を産み、子を育て、家を守る。

昔からあるべき女性の姿とされてきた、“良妻賢母”。

しかしその価値観は、現代においてはもう古い。

結婚して子どもを産んでも、男性と同等に働く女性が増えた今こそ、良妻賢母の定義を見直す時だ。

家庭も、仕事も、子育ても、完璧を目指すことで苦しむ東京マザーたちが模索する、“現代の良妻賢母”とは、果たしてどんな姿だろうか。

レコード会社で働く佳乃は出産後、時短勤務で復職した。夫の紀之は家事を手伝ってはくれるものの、仕事と子育てに追われる佳乃は、思い描いていた良妻賢母になれない自分のことで苦しんでいた。


「希ちゃん、プロポーズされたの?おめでとう!」

出勤途中に『ファクトリー』で買ってきたレーズンパンを食べながら、佳乃は少女のようにはしゃいだ。

佳乃はパンを、希は近くで買ってきたロコモコ丼のお弁当を食べながら、社内のミーティングスペースで慌ただしくランチを食べている時だ。

「ありがとうございます。でも私、条件をだしました」

そう言って、希はプロポーズされた当日のことを話してくれた。

「確かに、男性の家事能力は大事よね。希ちゃん、しっかりしてるわね」

佳乃が言うと、希はなぜか少しだけ気まずそうに視線を落とし、口元だけで笑った。

「今週、佳乃さんは夫婦デートなんですよね?」

それ以上聞かれたくないのか、希は話題を変えてきた。週末は広島から母が来るのだと、以前言っていたことを覚えてくれていたようだ。

「そうなの。2~3時間しか預けられないけど、久しぶりに夫と2人で銀座にでも行こうと思ってるわ」

「お子さんが生まれてもそんなに仲良しなんて、羨ましいです~!」

希にそう言われて、悪い気分ではなかった。だが翌日佳乃は、社内の仲が良い同僚から嫌な話を聞くことになった。

「佳乃って、ほんと心が広いわよね」

そう言われて、最初は何の事だかわからなかった。だが、詳しく話を聞いて、佳乃は言葉を失った。

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