ラール・エ・ラ・マニエール Vol.9

「実は、お酒を美味しいと思ったことがなくて……」そんな女性を開眼させた、特別なマリアージュとは

『ラール・エ・ラ・マニエール』は、人生に迷った者が辿り着くという、不思議な、だけど実在するレストラン。”正しい導き方”という意味を持つこのレストランは、東京での生き馬の目を抜くような生活に疲れた時に、その扉が開かれる。
さあ今夜、その扉の前に現れたのは……?

さらにこの物語に出てくる料理は、実際にあなたも味わうことができます。
あなたの物語も綴ってください。
このレストランで、料理とともに……。

第1話:婚約破棄された美人受付嬢を蘇らせた、あるレストランの物語
第2話:離婚届を突き付けられた男を立ち直らせた、ソムリエの機転と、ある意外な料理
第3話:転落したベンチャー企業の元社長。彼に過ちを気付かせた「王道」の料理とは
第4話:元モデルが抱え続ける焦燥感。「何者」にもなれない自分に価値はない?
第5話:初めて愛した人にプロポーズを断られた男が気付いた、自分の存在価値とは?
第6話:悩めるスタッフを救った、一流レストランの“特別”な賄い料理とは?
第7話:“おひとり様”を覚悟した女性を癒した、フレンチ×液体窒素の魔法とは
第8話:上層階に住むってそんなに偉いの?!タワマン格差に悩む女性を救った、栗の王様を使ったデザートとは?


真菜(25歳)はフォロワー1万人を抱える、人気インスタグラマー。今日は、インスタグラムで何度か見たことのある『ラール・エ・ラ・マニエール』を訪れた。

コース料理を頼み、ソムリエの吉岡と時折会話を交わしながら食事を楽しんでいると、メイン料理は「広島県産 鹿のロースト」と聞いてテンションが上がった。

「私も広島出身なんです!なんて奇遇。楽しみだな。」

心から楽しそうな笑顔で言った。

真菜は広島出身で大学卒業後に上京した。有名アパレルメーカーでの就職が決まったからだ。

「大好きなファッション業界で、自分のセンスを活かして活躍するんだ……!」

夢と希望に溢れた上京。大学2年の時から付き合っていた彼とも、「遠距離だけど頑張ろうね」と誓い合って地元を後にした。

だが、覚悟はしていたが入社後の販売員生活は、予想以上に苦痛だった。

長い拘束時間、体力勝負の立ち仕事、安い給料、のしかかる売り上げノルマ……。段々と息苦しくなり、楽しみだった東京生活に未来を見いだせなくなってきた。

そんな時、流行り出したインスタグラムを始めた。

自分のコーディネートや自撮り写真をアップすると、知らない人から「いいね!」がもらえ、フォロワーもどんどん増えていって面白かった。

自分のセンスや着こなし、それ以上に生き方まで賞賛されているような気分になり、「いいね!」の数が増える程に、真菜の心は満たされていったのだ。フォロワーが2,000人目前となった頃、今のモデル事務所から連絡が入り、事務所に入ることにした。現在は同じアパレル会社で、アルバイトスタッフとなりバックオフィスで事務をしている。

タレントになりたいわけではない。芸能界なんて怖そうだから、今ぐらいがちょうど良いと思っている。インスタグラムをしていると、承認欲求が満たされるのがとにかく嬉しくて、フォロワーが増えるよう思考錯誤を繰り返した。

真菜の状況が目まぐるしく変化している時に、地元の彼から言われてしまった。

「こんなんじゃ、付き合ってる意味ないよね。」

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