ラール・エ・ラ・マニエール Vol.5

ラール・エ・ラ・マニエール:初めて愛した人にプロポーズを断られた男が気付いた、自分の存在価値とは?

『ラール・エ・ラ・マニエール』は、人生に迷った者が辿り着くという、不思議な、だけど実在するレストラン。”正しい導き方”という意味を持つこのレストランは、東京での生き馬の目を抜くような生活に疲れた時に、その扉が開かれる。
さあ今夜、その扉の前に現れたのは……?

さらにこの物語に出てくる料理は、実際にあなたも味わうことができます。
あなたの物語も綴ってください。
このレストランで、料理とともに……。

第1話:婚約破棄された美人受付嬢を蘇らせた、あるレストランの物語
第2話:離婚届を突き付けられた男を立ち直らせた、ソムリエの機転と、ある意外な料理
第3話:転落したベンチャー企業の元社長。彼に過ちを気付かせた「王道」の料理とは
第4話:元モデルが抱え続ける焦燥感。「何者」にもなれない自分に価値はない?


涼太は、麻紀のインスタグラムを見ながら迷っていた。

3日前に麻紀が投稿した写真が引っ掛かっているのだ。それは『ラール・エ・ラ・マニエール』というレストランで撮られた写真のようだが、いつもの投稿とは雰囲気が違うのだ。

いつもは楽しそうなコメントと沢山のハッシュタグを必ずつける彼女が、その写真にはコメントではなく、ハートマークだけをつけていた。そのことがなぜだか気になって仕方ないのだ。

―ていうか、何やってんだオレ。これって軽いスト―カーかな……

そんな思いがよぎり。乱暴にスマホをデスクに置いて頭を仕事に切り替えた。

麻紀には「結婚しよう」とプロポーズしたが「え?ムリムリ」と軽く笑われながら振られた。彼女とはその夜から会っていない。もう3カ月前のことだ。

麻紀とは、食事会で知り合った。彼女はその場にいた4人の女性の中で、1番綺麗で1番愛想がなかった。最初こそ、男たちは麻紀をみてテンションを上げたが、その愛想のなさから、会が進むにつれ彼女はどんどん浮いてしまった。だが涼太はそんな彼女が気になって仕方がなかった。一目惚れだったのかもしれない。

彼女がモデルと聞いて最初は尻込みした涼太だったが、思い切って食事に誘ってみた。すると意外とすんなりOKしてくれ、意気揚々と出かけた最初のデートのことは、今でもよく覚えている。

それから何度かデートを重ね、自然とそういう関係になった。外見は派手だが実は素直で義理堅く、明るく前向きで涼太が落ち込んでいいると優しく励ましてくれるなど、知れば知るほど、彼女の事を好きになっていった。

涼太は初めて心から愛せる女性と出会い、丁寧に愛を育んできた。だが、そう思っていたのは涼太だけだった。どうやら、彼女には他に好きな人がいたようなのだ。涼太よりも少しだけ年上で、涼太の何倍も稼ぐ男だ。

麻紀は元モデルだが読者モデル出身のため、スタイルが特別良いわけではない。だが華があり明るい性格で、自慢の彼女だった。彼女のためには時間とお金を惜しまず、デートもプレゼントも奮発した。

だが、全ては泡のように消えた。彼女にとって涼太は特別な存在ではなかったようだ。それ以来、涼太はふさぎこんでしまっている。

自分でも嫌になるが、それでもやはり麻紀のことは嫌いになれず、彼女のSNSはつい毎日チェックしてしまうのだ。

―前に言ってた“好きな人”に連れて行ってもらったのかな……。

彼女のインスタから『ラール・エ・ラ・マニエール』のレストランタグを見てみると、一人で行くようなレストランではさそうなのだ。

―銀座のフレンチかぁ……。

散々迷った挙句、ウジウジ悩んでいる自分が嫌になり、涼太は『ラール・エ・ラ・マニエール』に行ってみることを決めた。

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