クォーターラバー Vol.1

クォーターラバー:四半期で相手の価値がわかる!? レストランで思い知った男のセンス

初デートと3ヶ月目のギャップ


祥子が慌てて追加オーダーをしたカプレーゼを食べながら、ふと初デートを思い出した。

紹介された日にみんなで飲んでいた場で 、次のご飯に誘われた。初デートのお店として指定されたのは、白金の沖縄料理屋『アダン』。初デートで沖縄料理をチョイスしてくるカジュアルな感じが好みだった。ご飯も美味しくて話も盛り上がり、非常に楽しいデートだったと思っている。

その後何度か食事をし、付き合うことになった。結婚願望が日に日に強くなっている祥子にとっては願っても見ない大物。

「祥子ってカプレーゼ好きだよね。」

太一からの問いかけでふと我に返った。

「あ、ごめん何? 聞いてなかった。」

「いや、いつもサラダとかカプレーゼとか頼むなと思って。 」

そう言って優しく微笑む太一に、普通は前菜からオーダーするでしょ、と心の中で突っ込みながら適当な愛想笑いで返す。健康と美容のために、最初の一口目はサラダを食べたいのが30歳女子の心理だ。

そう、太一はメニューを選ぶセンスがイマイチ。

体育会系だから仕方ないと思い最初は気にしていなかったが、付き合ってから何回かデートをするうちに、太一のメニュー選びのセンスのなさが露呈してきた。毎回前菜などは飛ばしていきなりメインや炭水化物系に行こうとする。

本当に些細なことなのは分かっているし、結婚するなら無駄にグルメで舌が肥え過ぎている男性よりよっぽどいい。しかしデートの度にそのチョイスはさすがに嫌だ。何度も言おうかと思ったが、自分の我儘でしかない気がしてぐっと言葉を飲み込んでいた。


ワインボトルが空き、「すみませーん!」と大声で店員を呼ぶ太一。

また胸がざわつく。

先輩の前ならまだしも、デート中に大声で店員さんを呼ぶのはどうかと思う 。太一に限らず、かなりの確率で店員さんを大声で呼ぶ男性が多い気がする。誰かそういうことを教えてくれなかったのだろうか。

何だかセンスがないなぁ……。

太一の私服がやたらと分かり易いブランド物で固められていたことも祥子にとってはマイナスポイントだった。ブランドで固められた男性の私服を見て、喜ぶ女子がこのご時世にまだいるのかと疑問に思う。決して、ブランド物が悪い訳ではない。さりげなくならいいのだが、あまりにも分かり易い感じが嫌だった。

負の連鎖のようにどんどん細かい所に目が行き始め、げんなりしている自分に気づく。

30歳にもなると男性を結婚相手として見るため、単純に好きだけでは判断できなくなる。結婚後の家庭のことや金銭感覚などを加味し、つい減点方式で判断してしまうのだ。

ハッピーバースデーの歌と共にお店側に頼んでおいたケーキが運ばれてきたが、全く耳に入ってこなかった。こうなるともう気持ちは止められない。

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