SPECIAL TALK Vol.2

~これからの世界における日本の戦い方。IT化が変えた働き方と、進化のスピード~

絶対に負けない日本の強みは「日本」であるということ

金丸:日本社会の展望について、どのようにお考えですか?

夏野:いい話と悪い話があります。まず悪い話ですが、人口減少は深刻な問題だと思っています。だからこそ、子どもたちに対する施策を徹底的に行うべきだし、あらゆる対策を打つべきです。この問題に猶予はありません。

金丸:この対談でもよく出てくるテーマです。

夏野:子どもを家庭で育てるという前提は、もう捨てたほうがいいと思います。そもそも人類の歴史を振り返ってみると、常に父親、母親がいて教育をするのが当たり前とする時代のほうが、はるかに短いのです。たとえば保育園だけでなく、あらゆる教育・育児システムを用意し、社会全体で子育てをしていく。各家庭に任せるより、全体コストもかかりません。いい話は、日本にはこんなに不甲斐ないリーダーや経営者ばかりなのに、それでも国としてこれほどの競争力があるということです。

金丸:日本人としての個人の力ですよね。

夏野:まさにその通りです。最近は「日本」という環境そのもののすごさも感じています。たとえば、コンビニでは多くの外国人が店員として働いていますが、「いらっしゃいませ」ときちんと言いますし、レジ前に長い列ができていたら、すぐに別のレジを開けて対応してくれます。日本では普通にみる光景ですが、上海のコンビニではそんなことをする店員は誰もいません。つまり、「日本」という環境が、労働品質を非常に高めているということなのです。

金丸:外国人労働者に対しては、自国が荒らされると思うのではなく、我々のメソッドを彼らに教育すればいいわけです。

夏野:日本には技術があります。ちなみに、この間話題になっている電気自動車のテスラに試乗したんです。そこで、一発で気に入り、その場で注文してしまいました。そのとき、テスラ社のイーロン・マスク氏が「この車は日本製だ」と言ったのです。80%は日本の部品を使っていると。

金丸:メイド・イン・ジャパンですね。

夏野:そして、デザインド・イン・カリフォルニアだって。iPhoneも同じですよね。部品の多くが日本製を使っています。つまり、日本には他の国の追随を許さない技術があるのです。

金丸:当社のグループ会社に、スポーツ用品のEC企業があるのですが、一部の商品をプライベートブランドとして中国で生産しています。先日、中国のEC企業とビジネスの話をしていた際、その商品を中国でも売らないかと訊いてみたら、「我々はメイド・イン・ジャパン以外は売らない。メイド・イン・チャイナは売りたくない」と言うのです。

夏野:日本には高い技術力と勤勉な人と、1650兆円にのぼる個人資産があります。さらに、上場企業の内部留保が330兆円もあるのです。技術と人と金。経営者の三種の神器が揃っているのですね。

金丸:しかも労働品質を高める環境もあります。これだけの条件があれば。

夏野:負けるわけがないですよ。それを生かす最後のチャンスが、この10年なのではないかと思います。10年のうちにどれだけの改革ができるのかにかかっています。

金丸:2025年が限度ですね。

夏野:2030年になると、人口が1千万人も減ります。そうなると、みな今持っている既得権益を手離したくないと思うようになってしまいます。だから正直なところ、2020年の東京オリンピックが開催される前に全部片づけてほしいんです。外国からお客様が来るから、きれいにしておかなきゃいけないというモードになっているときに全部片づけないと。本当に人口減少が経済に打撃を与え始めてからでは、改革ができなくなってしまいます。

【SPECIAL TALK】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo