SPECIAL TALK Vol.2

~これからの世界における日本の戦い方。IT化が変えた働き方と、進化のスピード~

金丸:夏野さんはご自身での起業を考えたことは?

夏野:iモードがそうだったように、どこかの企業のプラットフォームを活用して新しいサービスを立ち上げるのであれば、そのほうが短期間で、経済効果も大きくなると思います。iモードもドコモでやったから、短期間であれだけの大きな器ができたわけで、売上も最盛期には年間1兆7千億円に達しました。まあ、それによって自身の懐が潤うわけではありませんが(笑)。ただ、それは自分で選べるものではないと思っています。そもそも、ドコモに入社したのも、その前の会社をつぶして、仕方なく入ったのです。だから、やりたいことがあったら明日起業するかもしれないし、あるいは来年、早稲田大学教授をやっているかもしれません(笑)。今はいろいろな企業の取締役をやらせていただいて、どの企業にも依存せず、自分の思うところをはっきりと言う。これも僕の役回りだと思っています。時に、たくさん兼任するのはあまりよくないという議論もありますが、それは逆で、どの会社にも依存していないからこそ、正直に自分の思うことを言えるのだと思います。

金丸:それが本来の社外取締役ですよね。

夏野:そういう意味で僕みたいな存在がますます増えていくのではないでしょうか。今後の日本社会には必要ですし、社会的な意義も感じています。

金丸:夏野さんみたいになりたい、という人が私の周りにも非常に多くいます。

夏野:ある意味、もう自分の人生は自分でコントロールできないと思っているんです。神様を信じているわけではないですが、でもなにか天命みたいなものはあるのだろうな、と。だから東京ガスで都市開発の仕事をしていなければ、iモードのプラットフォーム発想だって出てこなかったかもしれません。Appleも、iモードのビジネスモデルをかなり研究したと聞きます。それくらいに突き詰めてビジネスを考えることができたのは、ありがたい経験です。そういうとき、何かに生かされている感じがするんですよ。きっと、あのとき東京ガスを選んだのも、今にして思えば導かれるままと言いますか……。

金丸:ジョブズのあまりにも有名なスピーチにもありますよね。「点と点がどこかに繋がると信じていれば、他の人と違う道を歩いていても自信を持って歩ける」と。

夏野:すべては繋がっているんですよね。ジョブズのスピーチは本当に心に響きました。今はITの伝道師のようなことをやっていて、政府のいろいろな委員会に呼ばれたり、オリンピック委員会のIT担当参与の話もあったりするのですが、それはやっぱり自分で描いたプランではないんですよね。もちろん、期待される役割には120%で応えないといけないと思って、がんばっていますけど。

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