SPECIAL TALK Vol.2

~これからの世界における日本の戦い方。IT化が変えた働き方と、進化のスピード~

ITリテラシーの違いが生んだあきらかな成長力の差

金丸:しかし、夏野さんは引く手あまたですね。テレビのコメンテーターまで器用に務めていらっしゃる。この人気はどういうところにあるのでしょうか?

夏野:正直、自分では理由はわかりません(笑)。でも、日本は一歩引いて物事を俯瞰して見る人が意外と少ないんじゃないかなと思っています。ITの話でたとえるなら、僕はネットワークを専門に教えているのですが、技術者はテクノロジーの話はできるけれど、インターネットの出現によって社会がどう変わったとか、経済にどのような影響を与えたのかなど、ビジネスモデルがどう変革したかを語れる人はほとんどいません。反対に経営の専門家は、経営面では語れるけれど、ITのほうはあんまり、という人が多い。

金丸:その関連性をしっかり語れる人がいないなか、夏野さんは経験則に基づいて話ができるのですから、非常に貴重な存在ですよね。

夏野:ITというテクノロジーによって、人類の進化スピードは一気に加速しました。それを顕著に示す数字があります。1994年からの20年間で、日本のGDPは2%しか成長していませんが、一方、アメリカは200%成長しているんです。これは経済規模が3倍になったことを意味します。同じ先進国なのに、この圧倒的な違いはいったい何なのか――。経済のファンダメンタルでいうと、まずは人口ですよね。確かにアメリカは、8千万人近く増えて3億2千万人くらいになっています。

金丸:人口が35%ほど増えているのですね。

夏野:ですから200%のうちの35%分は人口が要因だと言えます。しかし、残る65%の成長要因がはっきりしないのです。

金丸:確かにその成長率だと説明が難しいですね。

夏野:要因として唯一考えられるのが、それこそITだと思っています。アメリカは官民が一体となって、ITを社会制度やビジネスの慣習にも徹底的に取り入れてきました。それに対して日本は「なんとなく危ないんじゃないか」とか「セキュリティが……」とか様々な理由をつけて、積極的には取り入れてきませんでした。この違いが、成長率の差に表れているのだと思います。

金丸:日本はいまだに「竹槍」で戦っていますからね。

夏野:まさに、僕もよくその表現を使います。21世紀はみんな大砲を持っているよ、と。それなのにいまだに「竹槍で行け!」とはっぱをかけられ、なんだか戦争末期の日本と同じような雰囲気さえ感じます。

金丸:発想が変わっていないということが根底にあるのでしょう。

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