尊敬。愛情。そして、下心。
男と女の間には、様々な関係性が存在する。
なかでも特に賛否を呼ぶのは、男女の間の”友情”は成立するかどうか。
その関係は、果たして「ゆるされる」ものなのか──?
「だれもゆるしてくれない」一挙に全話おさらい!
第1話:「彼氏がいるけど、親友の男友達と飲みに行く」30歳女のこの行動はOK?
「いけない!最初のセッションのお客様、いつも予約時間よりちょっと早く着かれるんだよね。そろそろ行かなきゃ」
コップに2cm残っていたスムージーを急いで飲み干すと、私は慌ただしく席をたった。
「莉乃!夜の飲みって、誰と行くんだっけ?」
玄関を出ようとする私の背中に、ダイニングから秀治が質問する。私はお気に入りのオニツカタイガーのスニーカーに足を入れながら、意気揚々と答えた。
「言ってなかったっけ?久しぶりに、“親友”とだよ!」
第1話の続きはこちら
第2話:「男女の間に友情なんて、あるわけない」疑心暗鬼になる彼女に、女の親友を紹介したら…
結婚したら仕事はやめて、家族のために家で時間を使いたい。手の込んだお料理や、きちんとアイロンをかけたシャツを準備してあげたい。子どもは2人くらい授かって、一緒にお菓子作りやお人形遊びをしてあげたい。
それはみんな、私が両親から、母からしてもらったことだったから。
― 正輝くんって、まるで私の理想の男の人が現実になったみたい。夢みたい…!
3ヶ月間、毎日ずっとそう思ってきた。だからこそ、ビックリしてしまったのだ。これまで、会話の中でもたまに登場していた“親友”の存在が──まさか、女の子だったなんて。
第2話の続きはこちら
第3話:「彼氏が女友達と2人で飲みに行くのが嫌!」27歳女が、素直に伝えたら男がとった意外な行動とは
化粧品会社に勤める萌香に初めて会った時のことは、昨日のことのように覚えている。
「マッチングアプリって初めてで…。もしも正輝くんが怖い人だったら走って逃げようと思って、珍しくスニーカー履いてきたんです」
そう言いながらホッとした笑顔で足をパタパタする萌香のことを、俺は一瞬で好きになってしまった。
― この子と一緒にいられたら、幸せだろうなぁ。
そう強く思ったのに──。
第3話の続きはこちら
第4話:「なんかモヤモヤする…」30歳女が、男友達の彼女に会ったときに感じた違和感とは
会うのが2度目になる萌香ちゃんは、以前よりも親しみやすい雰囲気に感じる。
先月初めて正輝に紹介してもらった時に一瞬だけ怖い顔をしているように見えたのは、きっと少し緊張していたか、単なる見間違いだったんだろう。
― ううん、それとも…。
わずかに感じる“しこりのような心当たり”を確かめるように、私はもう一度ワイングラスに口をつける。
昨日の深夜に正輝から入っていたLINEのメッセージ。それを見た時に感じた“心当たり”を。
第4話の続きはこちら
第5話:「異性の友達なんて、ありえない」彼氏の女友達に嫉妬する、女子校育ち27歳女の本音
“彼女たち”はいつだって、サバサバとした魅力的な女性の姿をしているのだ。
なんの害もない女友達という皮をかぶって、人の彼氏の隣を陣取る女たち。
― 莉乃さん。莉乃さんは違うんだよね?本当に、正輝くんとはなんでもないんだよね?
疑心暗鬼になる気持ちを、私は必死でワインと一緒に飲み下そうとする。
けれど私はどうしても、3年前の出来事がフラッシュバックするのを止められないのだった。
第5話の続きはこちら
第6話:「もう会うのやめよう」突然届いたLINE。30歳男が動揺の末に出した結論とは
東京よりも時間がゆっくり過ぎていくように感じる沖縄では、うまく頭を空っぽにすることができなければ、かえっていろいろと考え事をしてしまうものなのかもしれない。
目下俺の気持ちをモヤつかせているのは、莉乃の態度だ。先月4人で食事をしてから、どうも様子がおかしい。
ご機嫌な様子でスイーツを食べる萌香の横で、俺はそっとシャンパングラスをスマホに持ち替える。
開いたLINEの画面には、莉乃から先週届いたメッセージが残っていた。
第6話の続きはこちら
第7話:「え、まさかそんなこと気にしてたの?」9年付き合っている彼氏が、突然女に漏らした不満とは
秀治は私とは目を合わせずに、タクシーの車窓から流れる夜景を見つめながら言葉を続ける。
「萌香ちゃん、今日はかなり頑張ってたと思うよ。電話のふりして外の空気吸いに行ったりして、一生懸命笑顔作ってた。
…男女の友情はそうやって、“パートナーの我慢”という犠牲を伴うんだ。本当は、だれもゆるしてくれてはいないよ」
秀治も?もしかして、私と付き合ってる9年間…ずっとゆるしてくれてはいなかったの?
……とは、聞けなかった。突きつけられた現実が、あまりにも恐ろしくて。
第7話の続きはこちら
第8話:「え、ここ?」男友達と恵比寿で飲んだ夜。タクシーで帰ろうとしたら、連れて行かれた意外な場所
― 男女の友情はあるって、心から思えたら…。こんなふうに正輝くんを束縛せずに、秀治さんみたいにふたりを見守れるのかな。
「ねえ、正輝くん」
「ん?」
「…おかわり、いる?」
莉乃さんに会いたい?という言葉をギリギリのところで飲み込んだ私は、とっさに違う言葉でお茶を濁す。だめ。その言葉は、私にはまだ早い。今また束縛を解いてしまったら、きっと私はまたふたりの関係を疑ってしまう。
この醜い束縛から正輝くんを解放してあげるためには───まずは私が、すべきことをしなくてはいけないのだ。
第8話の続きはこちら
第9話:半日返信しないと鬼LINE。面倒な女と思いつつ、それでも30歳男が結婚を決めたワケ
姉貴夫婦を羽田まで迎えに行ったりしてバタバタしていたら、気がつけばすっかりスマホをほったらかしすぎてしまっていた。
― まずいなぁ。これはかなりスネてる…。
食事が終わったらすぐに返事をしようと思っていたものの、この30分で泣き顔のスタンプが3つも送られてきている。
いよいよ食事に集中できなくなってきたため、まずは一通『今食事中だから後でね』とでも返そうとした、その時。
姉貴が、昔から変わらない不敵な笑みを浮かべて言った。
第9話の続きはこちら
第10話:友人の恋人の“秘密”を目撃した夜。真実を友人に知らせるべきか、葛藤する女心
勘違いでなければあの瞬間、萌香ちゃんの方も私を見つけていた。それも、皮肉な微笑みを唇の端に浮かべて。
― 萌香ちゃん、どうして…?
何度考えても、分からない。発見してすぐは信じられなさすぎて、何度も見間違いだと自分を納得させようとした。だけど、月日が経てば経つほど輪郭は強さを増していく。
それは、萌香ちゃんを信じたいという渇望に似た気持ちと───正輝に伝えないままでいいのかという罪悪感によるものに違いなかった。
第10話の続きはこちら
第11話:彼氏の実家に初訪問。向かう途中の車内で、男が言い出したとんでもない要望とは
― やっぱり、男女の間に友情なんてない。
もうこの考えは、決して私の中で変わることはないだろう。
何年もの間まったく男性として見ていなかった中村くん。そんな中村くんから酔いに任せて迫られた事実は、筋違いなようだけれど、正輝くんと莉乃さんに対する私の嫉妬心をますます浮き彫りにすることになった。
いい歳をして正輝くんのことを束縛するのが恥ずかしくて、一度は理解しようとしたけれど…今は、なおさら許すことができない。
気がつけば私の嫉妬深さは莉乃さんだけにとどまらず、正輝くんと離れている時はいつだって、疑心暗鬼に陥るはめになってしまったのだ。
第11話の続きはこちら
第12話:「幸せなんだけど、この妙な空気はなに…?」彼女と2人きりの車内、男が感じた緊張感とは
莉乃とここに来るといつも注文するのは、ナポリピッツァとビールだった。だけど、今日はどちらからともなく2人ともジンジャエールを頼むことになった。
莉乃がどうしてソフトドリンクを注文したのかはわからない。単純に、このあと仕事があるのかもしれない。
だけど、俺がアルコールを頼まなかったのは、せめてもの萌香への誠実さのつもりだった。
辛口のウィルキンソンジンジャエールを舐めながら、ゆっくりと思い出す。昨日の信号待ちの間の、萌香とのやりとりを。
第12話の続きはこちら
第13話:「おめでとう」の裏で揺れる心。長年の男友達の婚約に、30歳女が決断したこと
あの夏の夜、秀治は萌香ちゃんが、私に密かにヤキモチを焼いていた様子だったと言っていた。
結婚が決まったとはいえ…ううん。決まったからこそ正輝は、萌香ちゃんに余計な心配をさせたくないのだろう。
― このあと正輝は、萌香ちゃんと会う。だとしたら、やっぱり早く話さなくちゃ…。
その一心で私は、ランチの真っ最中にはついつい出しそびれていた封筒を、ゴヤールのバッグから取り出す。
「実は、今日正輝に来てもらったのは、この話をしたかったからなの───」
第13話の続きはこちら
第14話:「マリッジブルー?それとも…」結婚式会場の下見で27歳女が抱いた、強烈な違和感とは
正輝くんのご家族とも付き合いがあるという莉乃さんなのだ。正輝くんに「会わないで」と言ったところで、一時凌ぎ。きっといつかはバレてしまうし、なにより、正輝くんのことは束縛しておきながら私は男性とふたりで会っていた…なんて状況で、ゆるしてもらえるわけがない。
涙は不思議と出てこなかった。ただ、今までずっと幸せな夢を見ていたような浮遊感だけがある。
「莉乃さんに、私たちの幸せをいっぱい自慢してきて」
そう言いながら私は、薬指のリングを陽の光にかざす。もう少しだけ、この甘い夢の中に浸っていたかった。
第14話の続きはこちら
第15話:「幸せだけど…」結婚まで秒読み段階で、30歳男が婚約者に感じた妙な違和感
萌香が、俺の大事な友達たちと積極的に仲良くなろうとしてくれるなんて…正直に言えば、全くもって予想していないことだった。
― 結婚したら、俺が友達と会うことくらいはゆるしてほしいな。
密かにそう思っていただけなのに、ゴルフ中にカナが言っていた通り、最近の萌香は妙に社交的だ。
このゴルフ会への参加も、萌香の方から「私も絶対に参加したい」と熱望されてのことだった。
萌香に一体、どんな心境の変化があったのかはわからない。わからないけれど…。
第15話の続きはこちら

































