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だれもゆるしてくれない Vol.14

「マリッジブルー?それとも…」結婚式会場の下見で27歳女が抱いた、強烈な違和感とは

有栖川匠

◆これまでのあらすじ

正輝と萌香は恋人同士。ついにプロポーズされ結婚が決まった萌香は、幸せの絶頂にいた。

けれど、正輝の性別を超えた親友・莉乃は、萌香がある晩正輝ではない男とホテルに向かう姿を目撃。親友の婚約者が不貞を働いているかもしれないことを伝えるか迷った莉乃だったが、正輝を呼び出して伝えた言葉は、「結婚おめでとう」の言葉だけだった。

▶前回:「おめでとう」の裏で揺れる心。長年の男友達の婚約に、30歳女が決断したこと


Vol.14 <萌香>


正輝くんのご実家に向かう車の中で、私はすっかり諦めの境地に至っていた。

― あーあ、正輝くんとはここまでか…。

莉乃さんから正輝くんへの“話”。そんなのもちろん、私のあの夜のことに決まっている。

「萌香ちゃんが知らない男とホテルに行こうとしていた」

「夜の恵比寿の路上でキスしてた」

莉乃さんが、どんなふうに伝えるかはわからない。

だけど、仮にも親友の彼女のそんなシーンを見てしまったのだ。結婚相手となるならば、このまま黙ってはいられないということなのだろう。

― 酔ってたし、自暴自棄な気分になってたとはいえ…私、バカなことしちゃったな。

本当は今すぐにでも、正輝くんを引きとめたい。「莉乃さんのところに行かないで」と激怒して、泣き喚きたい。

そして、自分の口で全てを打ち明けて──謝って、縋りついて、あの夜のことなんて無かったことにしてしまいたかった。

だけど、きっとそんなことにはならない。

正輝くんのご家族とも付き合いがあるという莉乃さんなのだ。正輝くんに「会わないで」と言ったところで、一時凌ぎ。きっといつかはバレてしまうし、なにより、正輝くんのことは束縛しておきながら私は男性とふたりで会っていた…なんて状況で、ゆるしてもらえるわけがない。

涙は不思議と出てこなかった。

ただ、今までずっと幸せな夢を見ていたような浮遊感だけがある。

「莉乃さんにいっぱい、私たちの幸せ自慢してきて」

そう言いながら私は、薬指のリングを陽の光にかざす。

もう少しだけ、この甘い夢の中に浸っていたかった。

この記事へのコメント

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No Name
披露宴に大勢の女友達呼ぶ男も珍しいよ。笑える...けどこの話はどこに向かってるんだろう
2025/10/20 05:2614Comment Icon1
No Name
もう正輝と萌香ちゃんはこのまま結婚でいいから、一度位秀治さんの本音を聞きたい。丸ごと一話分割いて。
莉乃に愛想尽かしてそうだったし、結婚願望なし結婚しない主義な彼女に対してどう思ってるのか等々。
2025/10/20 06:0410
No Name
正輝の事がすごく好きだから色々と不安を抱えていたけれど、婚約した事で安心して精神状態も正常になった。まぁよくある事だし「強くなった」のとはまた違うような気もする。  莉乃は友達正輝だけかのように執着してたけど、正輝は女友達がゾロゾロいたのかw
2025/10/20 05:398
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だれもゆるしてくれない

有栖川匠


尊敬。愛情。そして、下心。

男と女の間には、様々な関係性が存在する。

なかでも特に賛否を呼ぶのは、男女の間の”友情”は成立するかどうか。

その関係は、果たして「ゆるされる」ものなのか──?

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