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だれもゆるしてくれない Vol.6

「もう会うのやめよう」突然届いたLINE。30歳男が動揺の末に出した結論とは

有栖川匠

◆これまでのあらすじ

正輝(30)と萌香(27)は、付き合って半年。けれど正輝には、莉乃(30)という異性の大親友がいた。

正輝の大親友が美女であることに不安と疑問を抱いていた萌香が「2人で飲みに行って欲しくない」と伝えた結果、莉乃の彼氏・秀治を含む4人でダブルデートの食事をすることに。

けれど、その食事での正輝と莉乃は親密な様子で、秀治は帰り道、莉乃に辛辣な一言を投げかけるのだった。

▶前回:「異性の友達なんて、ありえない」彼氏の女友達に嫉妬する、女子校育ち27歳女の本音


Vol.6 <正輝>


「ん、美味しい〜!正輝くんも食べてみて、この黒糖のスコーン」

「ああ、うん」

大はしゃぎする萌香の顔をよく見るためにトムフォードのサングラスをずらすと、とたんに俺の瞳孔には、眩しく輝く世界が飛び込んできた。

サファイアのように真っ青な空。

キラキラと輝くターコイズブルーの海。

名護湾を背景に整然と広がるグリーンのゴルフコース…。

少し遅い夏休みと、少し早い交際半年記念日。その両方を兼ねて訪れたラグジュアリーホテルは、まさにこの世の楽園と言ったところだ。

アフタヌーンティーを楽しむために通されたのはテラス席だったけれど、沖縄の緯度は東京よりもずっと低いというのに、嫌な暑さはまったく感じない。

麻布十番の部屋の窓をちょっとでも開ければ、たちまち室外機のような熱風にやられてしまうだろう。

だけど今、俺と萌香の頬を撫でる沖縄の風は、まるで俺たちを優しくあやしてくれているかのように柔らかく心地良かった。

「本当だ、めちゃくちゃ美味しい。萌香、好きなだけ食べなよ」

勧められるがままスコーンを味見した俺は、舌に残る黒糖の甘みをシャンパンでリフレッシュし、萌香に微笑む。

けれどこんな天国のようなシチュエーションにいながらも、俺は密かにずっと、胸の中にモヤモヤした気持ちを抱え込んでいるのだった。

この記事へのコメント

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No Name
読みながら何度も舌打ちする位、本当に正輝は能天気で困った男だわと思ってたら、最後なかなかやるじゃん。ようやく萌香も安心出来そうで良かった。
でも予告文.. 嫌な予感が。
2025/08/25 05:1611
No Name
秀治さんが今さら莉乃に何か言うわけもない。

いやいや、何勝手に決めつけて。実際結構強く言われたんじゃないかな、タクシー内では「いつまで続けるの?」程度だったけど。出来れば次秀治の本音を読みたい!多分莉乃と別れるのかも? で莉乃が相談に乗ってくれと正輝に頼み込んでまた萌香を傷つける的な?展開は止めて欲しい。
2025/08/25 05:2611Comment Icon1
No Name
莉乃との間の失態よりも、四人の席で何かやっちゃったかなとか考えないんだね正輝は。 萌香が4当分にお取り分けした莉乃のプレートから苦手なものを取り除いた事とか。
2025/08/25 05:4410Comment Icon2
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だれもゆるしてくれない

有栖川匠


尊敬。愛情。そして、下心。

男と女の間には、様々な関係性が存在する。

なかでも特に賛否を呼ぶのは、男女の間の”友情”は成立するかどうか。

その関係は、果たして「ゆるされる」ものなのか──?

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