男という生き物は、一体いつから大人になるのだろうか?
32歳、45歳、52歳──。
いくつになっても少年のように人生を楽しみ尽くせるようになったときこそ、男は本当の意味で“大人”になるのかもしれない。
これは、人生の悲しみや喜び、さまざまな気付きを得るターニングポイントになる年齢…
32歳、45歳、52歳の男たちを主人公にした、人生を味わうための物語。
「32→45→52:それでも男は完成しない。」一挙に全話おさらい!
第1話:2回目のデートで、32歳男が帰りに女を家に誘ったら…
「ねえ、ここも素敵なお店ですねっ。ザ・隠れ家って感じ。ほんと、充さんってたくさん素敵なお店知ってますよねぇ」
熱っぽい視線を絡ませるニナちゃんにそんな下心が見透かされないよう、僕はなるべく誠実な態度を心がけながら、この数年で仕入れた知識で美味しい日本酒を選定する。
もちろん、会計は僕持ちだ。会話の端々に、仕事の面白さをトピックとして盛り込むことも忘れない。
仕事ができること。金銭的に余裕があること。グルメに強くなること。それが、32歳の洗練された男の立ち振る舞いなのだから。
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第2話:「バツイチ」という肩書は、意外と武器になる!?離婚して10年、45歳広告代理店男の恋愛事情とは
新卒で大手広告代理店に入社して23年。その間ずっと、仕事に、飲みに、趣味に、遊びに、全身全霊で挑んでいた。そういう時代だったから。
その結果、誰よりも早く管理職に就くことになったし、仕事にはそれなりのやりがいを感じている。
だけどこうして、ちょっとしたズレを突きつけられる度に感じるのだ。
45歳になった俺は、今でもまだ“現役”でいられているのだろうか───と。
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第3話:「妻はいるけど、夫婦関係が成り立っているかは別」経営者52歳のプライベートとは
― 15年前に会社を作った時には、社員はたったの5人しかいなかったのになぁ…。
不動産コンサル業を始めるため、15年前、この店の一番小さな個室で開催した決起集会。そこから少しずつ仲間を集め、ついにメインのホールを貸し切るところまで来た。
しみじみとした喜びを噛み締めながらも僕は、壁際に数脚設けられた椅子に密かに腰を下ろす。
長い立食パーティーに軽く足腰の疲れを感じたこともあるけれど、少しだけ1人になって、この喜びに浸りたかったのだ。
― 会社は15歳。そして僕は、いつのまにかもう52歳か…。
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第4話:7歳上の職場にいる女性が気になる32歳男。ダメ元で誘ってみたら意外にも…
7歳上の美玖子さんだけれど、新卒入社の僕と入社時期が一緒で、これまでに何度も美玖子さんの優しさに助けられてきた。
だからこそ僕は、年上なんてことは関係なく、このひとを好きになったのだ。
そんな美玖子さんの優しさに、甘える気持ちが出てきてしまったのだろうか?気がつけば僕は、自分でも信じられないことを口走っていた。
「気にかけてもらっちゃってすみません。あの…そうなんです、なんか食べそびれちゃって。美玖子さん、よかったらこの後もう一軒行きません?」
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第5話:「まだ俺に色気はあるか…?」結婚20年、45歳男が21万円の高級ニットを購入したワケ
思わずため息が漏れる。いつから妻と僕は、「パパ」「ママ」なんて呼び合うようになったんだろう?
全く、大人の色気もなにもあったもんじゃない。
「はーい、ママ」
そう思いながらも、湯上がりの体にユニクロのTシャツをまといながら、いつも通りの返事をする。
その瞬間なんとなく、心に強く思ったのだ。45歳。まだこんなふうに男を捨てるには、早すぎるんじゃないか?───と。
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第6話:「残りの人生は、消化試合だろう…」飲食店経営で成功した52歳男性が抱える虚無感の行方
自画自賛するようだけれど、ここより美味しいフレンチは他にはないと思う。
主戦力はもちろんディナーだけれど、より多くの客に気軽に自慢の料理を楽しんでもらいたいという想いで、数年前からこうしてランチも始めている。
― 今のお客さまは、どうやら初めてご来店いただいたようだけど…気に入っていただけたかな?
他の客へのサーブの合間を縫って、先ほどの男性へ目を配る。けれどそこで見た光景は、僕にとってあまり嬉しいとは思えないものなのだった。
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第7話:「結婚はまだいい…」そう思っていた32歳が、結婚を決意した意外なキッカケとは
サチの前に付き合っていた彼女――美保とは、20代後半のほとんどを一緒に過ごした。
パリのフレンチレストランで働く僕と、フランスの航空会社でフライトアテンダントとして働いていた美保。
彼女から何度も「30歳前に結婚したい」と言われてお互い日本に帰ってきたものの、そこで五味さんと出会った僕は、もっともっと新しい挑戦がしたくなって――。
その結果、仕事と美保とを両立することができなくなり、5年という歳月を共にしたにもかかわらず、きっぱりと仕事の方を選んで別れたのだ。それなのに…。
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第8話:「記念日には妻とデート」理想の夫で父でもある、45歳経営者の裏事情とは
15年も夫婦を続けていれば、いつまでもドキドキするような関係が続いているほうがおかしいというものだろう。
逆に考えてみれば、常にフラットなメンタルでいられるというのは、円熟したいい夫婦の形だとも思う。
そう。亜由美とは、いつまでもいい夫婦でいたい。大切な家族を守るためにも、世間的にどう見られるかを考えてみても。
だからこそこうして必ず、毎年の結婚記念日のディナーは大切にしている。
それこそが、45年間男として生きてきた僕の――うまく生きるコツのひとつなのだ。
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第9話:高級料理店に足繁く通う、50代男性と20代美女カップル。ふたりを繋ぐのは、金銭でもときめきでもなく…
普通の20代の女の子みたいに料理の写真をパシャパシャとやかましく撮ったりしないところが、なんと言っても結城さんのいいところだ。
その時だった。ふと、L字型のカウンターの端にいる他の客と目が合った。
男女の二人連れ。52歳の僕より少し若く見える。おそらく40代半ばの男性と、20代の女性…。どうやら2人の関係性は、夫婦や恋人同士ではなさそうだ。
僕と結城さんも、そうではないように。
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第10話:美食三昧だったCAが医者と結婚。子どもが生まれ「こんなはずじゃなかった」と思ったワケ
まるで空き巣にでも入られたのではと思うほどに荒れた部屋。だけど僕はそんなことは全く気にせずに、散らかり放題の部屋を縫うようにして進む。
たどり着いた先は、寝室だ。玄関のドアと同様、なるべく音をたてないようにそっとドアを開く。
そして、部屋の隅に寄せられた二つのシングルベッドを覗き込み目を細めた。
そこにで安らかな寝息を立てているのは、僕にとって何よりも愛おしい宝物───妻と息子のふたりなのだから。
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第11話:寝室はひとつなのに、もう10年一緒に寝ていない…。妻との会話が子育てしかない45歳夫婦の苦悩
「ああ、白川といえば。今夜あいつと飲みに行ってきていいかな?」
「ええっ、うそ!あんなことがあってもまだ飲むつもりなの?」
「ちょっとだけだから。そこそこにするよ」
「もう〜信じられない。絶対ちょっとにしてよ!入院したときだってあなた、先生の方が具合わるそうですよーなんて言い出して、あの時は私本当にどうしたらいいかって──」
コロコロと方向性を変えながら所構わず乱射され続けるマシンガンを前に、僕はボンヤリと心の中で考える。
45歳。どうしてこんなことになってしまったんだろう…と。
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