男という生き物は、一体いつから大人になるのだろうか?
32歳、45歳、52歳──。
いくつになっても少年のように人生を楽しみ尽くせるようになったときこそ、男は本当の意味で“大人”になるのかもしれない。
これは、人生の悲しみや喜び、さまざまな気付きを得るターニングポイントになる年齢…
32歳、45歳、52歳の男たちを主人公にした、人生を味わうための物語。
Vol.1 神楽坂デート
広告代理店勤務の32歳、加川充の場合
「おう、加川。このあとサクッとどうだ?」
親指と人差し指を口元でクイクイと揺らす前時代的なジェスチャーで、シローさんが僕に言った。
「いや…フツーに行かないです」
「おい〜なんだよ、上司の誘いが聞けな言って?」
「シローさん、やばいですよ。それ完全にパワハラですからね。管理職ならさんざんコンプラ研修やってるでしょうに…」
手元のApple Watchを見ながら、僕はシローさんを振り切ろうとデスクの上を片付ける。
時刻は19時を回った。店の予約時間はすぐそこまで迫っている。
それというのにシローさんは心底つまらなそうに、大袈裟に天を仰いで僕に顎下のシャレた無精髭を見せつけて言葉を続ける。
「あ〜、今時はほんと何でもかんでもコンプラコンプラ。俺と飲みに行くより大事な用ってことは、デートか?」
「はい、デートなのでお断りします」
「お前、ほんといっつもデートだよな。こう言っちゃなんだけど、お前ってそこまでイケメンってわけでも…」
「はい、さっきから終始パワハラかつセクハラかつルッキズムで、シローさんマジでヤバいです。本当、オヤジですよ?じゃ、お先に失礼します〜」
この記事へのコメント
なんか違和感…。