男という生き物は、一体いつから大人になるのだろうか?
32歳、45歳、52歳──。
いくつになっても少年のように人生を楽しみ尽くせるようになったときこそ、男は本当の意味で“大人”になるのかもしれない。
これは、人生の悲しみや喜び、様々な気づきを得るターニングポイントになる年齢…
32歳、45歳、52歳の男たちを主人公にした、人生を味わうための物語。
▶前回:美食三昧だったCAが医者と結婚。子どもが生まれ「こんなはずじゃなかった」と思ったワケ
Vol.11 七夕、渋谷川を越えて
外資コンサル勤務の45歳、椎名朋之の場合
「─それでね、木村コーチが言うには、ちょっとでもいいからタカユキには海外留学をさせてみたらって。
でも、そうは言ってもタカユキも、もう6年生とはいえまだ目は離せないところはあるじゃない?あの子ってしっかりしてるようでいて、やっぱり早生まれだし──」
朝食を取る食卓の向こうで、妻の梨沙は朝からお得意のマシンガントークを繰り広げていた。
ナントカとかいう美容成分入りのパックが顔に張り付いているせいで、言葉はモゴモゴと聞き取りづらい。
「だれだっけその、木村コーチってのは」
「やだ!サッカーの木村コーチだってば!もう〜信じられない、ヒロユキの時だってさんざんお世話になったのに。
それでね、ヒロユキはユウスケくんがもう将来お医者さんになりたいって夢が決まってるのがプレッシャーみたいで。まだ中2だし焦ることないじゃない?って私は言ってるんだけど─」
「ユウスケくん…?」
「うそでしょ!ヒロユキの、初等部の時からの親友のユウスケくんよ!」
「ああ、小林ユウスケくん」
「あ〜びっくりした、息子の親友を忘れちゃったのかと思った。あなたにとっては白川くんみたいな、そういう存在でしょ。
それでね、ヒロユキいざとなったらパパと同じ仕事でいいとか言ってるんだけど、そうじゃないぞ、そんな簡単なことじゃないぞって。まずは自分のやりたいことをゆっくり考えてって私──」
「ああ、白川といえば。今夜あいつと飲みに行ってきていいかな?」
「ええっ、うそ!あんなことがあってもまだ飲むつもりなの?」
「ちょっとだけだから。そこそこにするよ」
「もう〜信じられない。絶対ちょっとにしてよ!入院したときだってあなた、先生の方が具合わるそうですよーなんて言い出して、あの時は私本当にどうしたらいいかって──」
コロコロと方向性を変えながら所構わず乱射され続けるマシンガンを前に、僕はボンヤリと心の中で考える。
45歳。どうしてこんなことになってしまったんだろう…と。
この記事へのコメント
そうだよね、七夕の夜とは言え...しかも奥さん「プロテインと間違えちゃった?」って😂 まぁ笹はきっとそんなに嬉しくなかったと思うから今度ちゃんとした花束買ってあげて♡
白川のオッサン、まだ言ってるのかいww
「あの女。贅沢な暮らしもさせてやってたし精一杯うまくやってきたじゃないか」
うるせー