SPECIAL TALK Vol.102

~世界最高峰をこの目で見た経験を生かし、人が集まるいい環境を作りたい~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。


自分のためだけではなく、いい研究環境を築きたい


金丸:国から資金を出してもらうと、「税金を使っているので誰でも使えるようにして、もうけは出さないでください」みたいな、とんでもない条件を出されますよね。だから自分たちで稼げるようにするとか、他の機関から資金を引っ張ってくる必要がある。西田さんもぜひ、ビル&メリンダ・ゲイツ財団あたりから引き出してください。

西田:そうですね。ゲノム編集もいくらでも応用ができるとはいえ、現実的に投資してもらえるかによって、どの領域を研究するか考えざるを得ません。ウシが発生させるメタンガスを減らす研究も、地球のことを考えればすごくインパクトがありますが、ビジネスとしていくらもうかるかと言われると、計算しにくい。

金丸:ところで、西田さんの夢は何ですか?

西田:本当の夢物語でよければ、「自分の大学を作りたい」と思っています。

金丸:なんだかスケールが大きくていいですね!

西田:現実的なシナリオはまったく見えませんが(笑)。でも、いつも思っているのは、自分ひとりだけでは成長することはできないということですね。人が集まるいい環境を作っていかなきゃいけない。どうやったらそういう環境ができるのかを考えています。

金丸:そういう意味では、海外の研究者に日本に来てもらう方向性もあるんじゃないですか。たとえば神戸大学は、有馬温泉が近い。だったら「うちにいる間は、いくらでも有馬温泉に行ってもらっていいですよ」とか(笑)。

西田:面白いですね!日本のカルチャーが好きという研究者に刺さりそうです。

金丸:あとは「神戸ビーフ食べ放題」も魅力的かと(笑)。それをフックに海外のトップクラスの研究者が来日して、たくさんの刺激を与えてくれるなら、安いものだと思いますよ。最後に、西田さんから若者に向けてメッセージをいただけますか?

西田:メッセージですか……。難しいですね。「研究者はいいですよ」「研究者になりませんか」とストレートに言えたらいいんですが、手放しでそう言えない現実があります。ただ、研究者にならなくても、自分が面白いと思える環境、成長できる環境に身を置いてほしいなと思います。

金丸:探究心や好奇心を持ち続けることは大切ですよね。でも実際には、自分がやりたいことよりも安定性を優先する人が多い。それじゃあ、つまらないと私は思います。

西田:もちろん「リスクが少ないのは、どういう道だろう?」と考えてもいいんです。ただ、実際にはそんなに先のリスクまで見通せるものではありません。ある時点で推測できるリスクとは全然違う落とし穴が、いきなり出現するかもしれないし。

金丸:「いい大学を出て、みんなが名前を知っている大企業に入る」と考える人は、いまだに少なくありません。むしろ、失われた30年の間にその傾向は強まっています。

西田:「周りがみんな就職するから自分も就職する」って、そこまでしか考えてない学生が多いですね。だけど、本当は未来なんてわからないじゃないですか。「リスクが回避できる」と思い込んでしまうのが、一番のリスクじゃないかと思うんです。

金丸:おっしゃるとおりです。

西田:自分がどうして安定を選ばなかったのか、考えてみてもよくわからないんですが、リスク回避って未来が決まっているという前提でしか効かないような気がするんですよ。だから私は結果として、むしろ不確実性に慣れてきたのかなと感じています。

金丸:未来は自分で切り開いていくものですからね。ゲノム研究の最先端をいく西田さんが、これからさまざまな分野において、日本をひと回りもふた回りも成長させくれるのではないかと期待しています。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

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