ポン女 Vol.1

ポン女:港区でシャンパンが開く場所に、なぜか必ず現れる女。彼女の目的は一体…

あえて飲まない“ソバーキュリアス”が流行っている今。

でもやっぱりシャンパンが好き!

港区界隈に夜の帷が下りる頃、あちこちで「ポン!」と軽快な音を立ててシャンパンが開く。

そこに突如として現れる美麗な1人の女がいる。

彼女の名は、天堂麗香。人呼んで「ポン女」。

港区とシャンパンをこよなく愛し、この地の治安と経済の発展のために生きる伝説の女。

今夜、港区のどこかでシャンパンを開栓してみたら、わかるはず!

きっと、彼女は現れる…。


Vol.1 人を惹きつける女


「婚約を…解消…?」

菜々子が喉の奥から絞り出すように繰り出した言葉は弱く、震えていた。

「申し訳ない。どんな言い訳もできないと思っている。どうか、僕を殴ってくれ…」

土曜の昼下がり、律は代々木上原の菜々子の部屋で、直角に頭を垂れ詫びている。

「いやっ!理由は何?私に嫌なところがあるなら直すから!」

大学時代から7年付き合った恋人がいなくなる。

菜々子にとって、それは全てを失うことと同義だった。

「私、もう会社に退職するって伝えたのよ?式場だって決まってるんだよ?」

色々考えていると目眩がしてきた。

頭の中で、これまでの様々な出来事がぐるぐると巡る。ありきたりな言葉だが、まるで走馬灯のように。

菜々子は、中途半端に姿勢を起こした律の腕を取って、真正面から揺さぶり、絶叫を繰り返した。

「私たち、幸せになるって約束したじゃない!!」

律は身じろぎもせず、菜々子から少し外れた壁を穴が開くほどじっと見つめている。

「お願い…私を見て…」

菜々子の瞳からは、とめどなく涙が溢れ、もはや鼻水も涙もわからなくなっていた。

律は菜々子の手を自分の体から引き離し、1歩退くと、今度は菜々子の目を見て言ったのだった。

「ごめん、菜々子。好きな人ができた。彼女、妊娠してるんだ」

この記事へのコメント

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No Name
婚約してからかなり時間も経っているのに、好きな人ができた。妊娠してるんだって…最低。
実家の菜々子パパに殴られるんじゃない?
2022/11/03 05:4975返信3件
No Name
せっかく、シャンパンをぽんぽん開けるマダムの話なら、毎回飲む(注文する) シャンパンの銘柄を明記してくれたらいいな〜と思います! その方が、東京カレンダーの小説らしさが出るので。是非。
2022/11/03 05:3467返信1件
No Name
日本女子大の…って、確かに。ポン女。
2022/11/03 05:3151返信2件
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